Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.677(2017年)→0.966(2018年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 血管
静脈1 

(S680)

東日本大震災南三陸町避難所の深部静脈血栓症の危険因子と避難所規模別の検出率の検討

Study of risk factors and shelter scale another detection rate of Minami Sanriku shelter of deep vein thrombosis in the Great East Japan Earthquake

坪内 啓正1, 山村 修2, 前田 文江3, 宮下 芳幸1, 宮腰 裕二1, 柴田 宗一4, 榛沢 和彦5, 徳力 左千男1

Hiromasa TSUBOUCHI1, Osamu YAMAMURA2, Fumie MAEDA3, Yoshiyuki MIYASHITA1, Yuuji MIYAGOSHI1, Muneichi SHIBATA4, Kazuhiko HANZAWA5, Sachio TOKURIKI1

1福井県済生会病院放射線技術部, 2福井大学医学部地域医療推進講座, 3福井大学医学部附属病院検査部, 4宮城県立循環器・呼吸器病センター循環器科, 5新潟大学大学院呼吸循環外科

1Radiotechnology, Fukuiken Saiseikai Hospital, 2Community Medicine, University of Fukui Hospital, 3Clinical Laboratory, University of Fukui Hospital, 4Cardiology, Miyagi Cardiovascular and Respiratory Center, 5Thoracic and Cardiovascular Surgery, Niigata University

キーワード :

【背景】
2004年の新潟中越地震では,車中泊者における肺塞栓症(Pulomonary embolism:以下PE)死亡例が報告され1),その後の能登半島地震,新潟中越沖地震,岩手・宮城内陸地震の避難所における下肢静脈超音波検診では,避難所や仮設住宅に深部静脈血栓症(Deep vein thrombosis:以下DVT)の発生が認められた2)3).2011年3月11日の東日本大震災では,津波による壊滅的な破壊と広範囲な浸水により,被災者は避難所生活を余儀なくされ,PEの発生が危惧された.今回,我々は被災地である南三陸町で下肢静脈超音波検診活動に参加し,PEの塞栓源であるDVT検出頻度と危険因子の関係,また避難所規模別によるDVTの検出率について比較検討したので報告する.
【対象と方法】
2011年3月14日から5月4日の9日間に,宮城県南三陸町の避難所12箇所を巡回し,下肢静脈超音波検査によるDVT予防検診を施行した242名(年齢67±14歳,男性81名,女性159名),484肢を対象とした.検診ではポータブル超音波検査機器を用い,DVTの有無,DVTの性状,静脈拡張(≧9mm)の有無を評価した.DVT陽性群とDVT陰性群において危険因子を比較検討した.さらに避難所規模を100人から300人(小規模群),300から500人(中規模群),1000人以上(大規模群)に分類しDVT検出率を比較した.超音波機器はSonoSite NanoMaxx(7.5MHzリニアプローブ),SonoSite TITAN(7.5MHzリニアプローブ)を使用した.
【結果】
DVT陽性例は13例(5.4%),14肢に認め,DVTの性状は新鮮血栓6肢,器質化血栓8肢であった.DVT陽性群はDVT陰性群に比べて下肢外傷(38.5%vs3.9%)を有意に認めた(P<0.001).その他の因子には有意差は認めなかった.DVTリスク要因を明らかにするため,ロジスティック回帰分析を行った結果,下肢外傷の有無に有意差を認めた(オッズ比25.2).避難所規模別の検討では大規模群(15.4%),は小規模群(2.6%),中規模群(3.9%)と比較して有意にDVTの検出率が高かった(P<0.01).
【考察】
南三陸町の被災者は,津波による下肢の外傷者にDVTが多く検出され,外傷による血管内皮障害によりDVTが誘発された可能性が考えられる.避難所規模別では,避難所が混み合う事で活動低下による血流停滞により,DVTが誘発される可能性が考えられる.DVT検出率は時間の経過とともに低下し,原因として集団避難,仮設住宅への移住により生活スペースが広がった事が関係していると考えられる.
【結論】
下肢外傷者には積極的に下肢静脈超音波検査をすること,また震災後の避難所環境の改善がPEの発症予防につながる可能性が示唆された.
【参考文献】
1)榛沢和彦.中越地震における車中泊者の肺・静脈血栓塞栓症の危険性について−車中泊者のエコー診療から−Therapeutic Research 2005;26(6):1207-1211
2)榛沢和彦,岡本竹司,佐藤浩一,ほか.中越沖地震におけるDVT頻度.Therapeutic Research 2008;29(5):641-643
3)柴田宗一,菊田寿,住吉剛吉,ほか.「チーム栗原」−岩手・宮城内陸地震における静脈血栓塞栓症予防活助-.心臓2010;42(4):473-480