Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 腎泌尿
腎泌尿器2 

(S677)

Virtual Touch Quantificationを用いた腎硬度測定

Renal Elasticity with Virtual Touch Quantification

高田 知朗

Tomoaki TAKATA

鳥取大学医学部機能病態内科学

Department of Multidisciplinary Internal Medicine, Tottori University

キーワード :

【目的】
肝線維化の評価においてVirtual Touch Quantification(VTQ)を用いた肝硬度は線維化の程度に良く相関する.慢性腎臓病(CKD)では,糸球体硬化や間質の線維化が進行するが,CKDでの腎硬度測定の報告は少なく,その変動について一定の見解はない.今回健常者とCKDの終末像である末期腎不全患者で腎硬度を測定し,その影響因子を検討した.
【方法】
2013年4月から2014年11月に,健常者(control)59例(24.6±3.27歳,男性59例),腎障害のない他病患者(non-CKD)31例(58.6±18.6歳,男性24例),末期腎不全(ESRD)39例(70.1±11.2歳,男性25例)の3群を対象としてせん断波速度(SWV;Shear Wave Velocity)を測定した.超音波装置はACUSON S2000(シーメンス)を使用し,1-4MHzコンベックスプローブを用いた.測定深度8cm以内で腎実質にROIを置き,左右それぞれ10回測定し,最大値と最小値を除いた8回の平均値を用いた.
【結果】
3群における腎硬度(左,右)(m/s)はそれぞれ,control(2.83±0.50,2.99±0.48),non-CKD(2.18±0.69,2.28±0.67),ESRD(1.99±0.61,2.27±0.65)であり,各群内で左右差はなかった.controlではnon-CKDおよびESRDと比較して有意に高値であった(いずれもp<0.001),しかしnon-CKDとESRD間には有意差はなかった.controlとnon-CKDにおいて,腎硬度と年齢との間には負の相関がみられた(左;r=-0.44,p<0.001,右;r=-0.38,p<0.001).control群内で,SWVと測定の深さの間には負の相関がみられた(左;r=-0.35,p=0.009,右;r=-0.34,p=0.011).SWVを目的変数とし,測定の深さ,年齢およびCKDの有無を従属変数とした重回帰分析によるSWVの関連因子は,年齢と測定の深さで,腎不全は関連しなかった.
【考察】
腎硬度は腎萎縮をきたした末期腎不全でも測定可能であった.今回controlとnon-CKDにおいて加齢による腎硬度低下が明らかとなった.一方,non-CKDとESRDの比較では差がなかったことから,末期腎不全は腎硬度に影響しなかった.CKD患者は健常者より低下する報告や腎の線維化進展につれ上昇する報告があるが,末期腎不全での腎硬度測定の報告はなかった.末期腎不全では,病理学的に糸球体硬化や間質線維化をきたす一方で,尿細管拡張や微小な嚢胞性変化をきたすことはよく知られる.このように硬度を上げる変化と下げる変化によって相殺され,末期腎不全において有意差が見られない可能性が考えられた.