Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 腎泌尿
腎泌尿器2 

(S677)

消化管ポリープ及び精巣石灰化を認めたPeutz-Jeghers症候群の1例

Gastrointestinal polyps and Testicular calcification Identified by ultrasonography in a boy with Peutz-Jeghers syndrome:a case report

武末 雅史1, 肥田木 辰洋1, 鈴木 清文1, 犬飼 博1, 宮﨑 寿哉1, 山田 隆之2

Masafumi TAKEMATSU1, Tatsuhiro HIDAKI1, Kiyofumi SUZUKI1, Hiroshi INUKAI1, Hisaya MIYAZAKI1, Takayuki YAMADA2

1聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院画像診断部, 2聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院放射線科

1Diagnostic Radiology, St. Marianna University Seibu Hospital, 2Diagnostic Radiology, St. Marianna University Seibu Hospital

キーワード :

【はじめに】
Peutz-Jeghers症候群(以下,PJS)は皮膚,粘膜の特有な色素斑と消化管ポリープを有する遺伝性疾患であり,これまで腸重積や悪性腫瘍などの合併報告が散見されるが,消化管ポリープ及び精巣微小石灰化の合併を認めたPJSの報告は少ない.
今回我々は,家族性PJSで超音波にて消化管ポリープ及び精巣微小石灰化を指摘できた1症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
【症例】
9歳男児.家族歴:父がPJSと診断.既往歴:1歳で熱性痙攣,5歳時に扁桃腺摘出術施行.現病歴:アスペルガー症候群.数か月前からの嘔気,腹痛,排便障害を主訴に来院.血液生化学所見はALP800IU/lと上昇し,Hb13.5g/dlと軽度の貧血を認める以外に異常は認めなかった.身体所見として口唇と左頬部粘膜に母斑散在.軽度の乳房腫大を認めた.超音波検査が施行され,横行結腸に境界明瞭で内部エコー不均一な血流シグナルを伴う有茎性ポリープを認めた.その他の腹部臓器に異常所見は指摘できなかった.その後,精巣超音波検査も行われ,精巣サイズに左右差なく腫瘤像は指摘できなかったが,右陰嚢内には少量の液体貯留を認め,両側精巣に多数の微小石灰化を認めた.内視鏡では食道に異常所見は見られず,胃体部から前庭部にかけて複数のポリープを認め,横行結腸と回腸末端にも小さなポリープが見られた.後日,全麻下にて生検及びポリープ切除術が施行された.病理所見はいずれも過誤腫性のポリープであり,悪性所見は認めなかった.
【考察】
PJSは消化管に多発する過誤腫性ポリープや皮膚粘膜の色素斑を特徴とする常染色体優勢遺伝性疾患である.特に家族性PJSでは消化管の他,さまざまな臓器(結腸,直腸,胃,膵臓,乳腺,卵巣,子宮等)に合併をきたし,悪性腫瘍の発生リスクも高い稀な疾患であるとされている.本症例では悪性所見は認めなかったが,超音波検査にて消化管ポリープおよび精巣微小石灰化を指摘し得た.また,臨床的に乳房腫大も認められ,これは石灰化を伴う精巣の内分泌作用による乳房腫大が原因と考えられた.本症は超音波検査において大腸ポリープ及び精巣微小石灰化を指摘し得たことにより,PJSの診断の一助に成り得た症例であったと考える.
【結語】
超音波にて腸管ポリープ及び精巣石灰化を指摘できたPJSの1例を経験した.家族性PJSでは悪性腫瘍の合併リスクが高いとされ,今後も悪性腫瘍の合併を念頭においた慎重な経過観察が重要である.