Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 腎泌尿
腎泌尿器2 

(S676)

経皮的腎砕石術の周術期評価:B-mode vs Directional e-flow ultrasound guidance

Clinical outcome of percutaneous pyelolithotomy:B-mode vs Directional e-flow ultrasound guidance

井上 貴昭1, 5, 岡田 真介3, 5, 浜本 周造4, 5, 田口 真1, 川喜多 繁誠1, 三浦 浩康5, 室田 卓之1, 5, 木下 秀文2, 松田 公志2, 5

Takaaki INOUE1, 5, Shinsuke OKADA3, 5, Syuzou HAMAMOTO4, 5, Makoto TAGUCHI1, Shigenari KAWAKITA1, Hiroyasu MIURA5, Takashi MUROTA1, 5, Hidefumi KINOSHITA2, Tadashi MATSUDA2, 5

1関西医科大学附属滝井病院腎泌尿器外科結石治療センター, 2関西医科大学附属枚方病院腎泌尿器外科, 3行徳総合病院泌尿器科, 4豊田厚生病院泌尿器科, 5多施設泌尿器科 結石治療グループ, SMART Study Group

1Urology and Surgery Department, Kansai Medical University, 2Urology and Andrology Department, Kansai Medical University, 3Urology, Gyoutoku General Hospital, 4Urology, Toyota Kosei Hospital, 5Multicentral Institute of Stone Management, SMART Study Group

キーワード :

【目的】
超音波技術の進歩に伴う画質の向上は腹部の周辺臓器の境界を明確にし,深部臓器の描出を今まで以上に可能にした.さらに高分解能血流表示機能をもつDirectional-eflow doppler mode(D-eflow)は血管のはみ出し減少を抑えることにより微細血管の観察を可能にした.腎結石治療において経皮的アプローチによる腎砕石術(Percutaneous nephrolithotomy: PCNL)は泌尿器科専門医にとって修得するのに“高いハードル”をもつ手術のひとつである.腎臓などの実質臓器に針を穿刺するという行為は,時にして大きな“出血”の原因になり得る.これら“出血”のリスクをできる限り回避するために,我々はD-eflow modeを用いて腎実質の血管の走行を確認し穿刺ラインを選択した上で,腎杯穿刺を行い砕石術を施行している(Fig.1).この方法の有用性と安全性について評価する.
【方法】
当院において2006年4月から2011年6月までに腎結石に対してB-mode(HITACHI EUB 6500)を用いて施行した50例のPCNLと,2013年6月から2014年11月までにD-eflow mode(HITACHI-ALOKA prosoundα7)を用いて施行した23例のPCNLの周術期結果をretrospectiveに比較検討した.B-mode PCNLはprone positionでリソクラストを用いて砕石を行い,D-eflow PCNLはmodified Valdivia positionでレーザーを用いて砕石を行った.Stone free(SF)はKUB,腹部超音波で明らかな残石が無い場合とした.
【結果】
手術は全例全身麻酔下で施行した.結石サイズは32.5±14.8mm,48.9±18.6mmと有意にD-eflow PCNLで大きかった(p=0.0001).B-mode PCNLとD-eflow PCNLにおける手術時間,initial SF-rate,final SF-rateはそれぞれ183.4±64.6分vs 151.8±31.7分(p=0.03),30%vs 78.2%(p<0.0001),42%vs 100%(p<0.0001)であった.合併症においてB-mode PCNLはD-eflow PCNLに比べて発熱(>38.5°)24%vs 4.3%(p=0.0245),出血(Hb-減少量≧2g/dl)36%vs 0%(p=0.0009)と有意に高かったが,輸血を必要とした症例はなかった.また術前・術後のHb減少量に関してD-eflow PCNLは-0.40±0.65g/dl,B-mode PCNLは-1.76±1.31g/dlと有意に少なかったが(p=0.0001),腎機能の変化(eGFR減少量)においては-0.47±10.8,-2.56±11.6ml/min/1.73m2と有意差はなかった(p= 0.435).
【結論】
D-eflow guided PCNLはB-mode guided PCNLに比べて葉間動静脈レベルのmain vessel,さらに末梢の血管の誤穿刺を回避し出血量の軽減に繋がると思われた.さらにそれにより良好な視野を得ることができSF-rateの改善に寄与すると思われた.またこれらのアプローチ方法の違いによる腎機能の変動の差は急性期においては認められなかった.本検討において両群の超音波器機,トラクトサイズ,術者の統一がなされていないこと,砕石器機の違いなど一概に比較できない部分もあるが,出血量に関しては明らかな差を認めておりD-eflow Doppler modeによるPCNLは安全を担保するための良い手段のひとつと思われた.