Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 腎泌尿
腎泌尿器1 

(S675)

肉芽腫性精巣上体精巣炎の一例

A case of granulomatous epididymo-orchitis

成田 啓一, 大堀 邦明, 森 徹, 金田 智

Keiichi NARITA, Kuniaki OHORI, Toru MORI, Satoshi KANEDA

東京都済生会中央病院放射線科

Department of Radiology, Tokyo Saiseikai Central Hospital

キーワード :

【症例】
70歳代男性
【主訴】
陰嚢腫大
【現病歴】
約1か月前より陰嚢の無痛性腫大を自覚し,近医の超音波検査で右精巣腫瘍を疑われ当院紹介となった.
【既往歴】
小児喘息
【生活歴】
喫煙30本/日×49年
【家族歴】
特記すべき事項なし
【血液検査】
WBC 7600/μl, RBC 422万/μl, Hb 12.3g/dl, Plt 465千/μl, CRP 3.14mg/dl, LDH 178U/l,β-hCG<0.1ng/ml, sIL-2r 431U/ml
【当院超音波検査】
右精巣は腫大し,上1/3程度が境界の比較的明瞭な低エコーを呈した.右精巣上体も腫大し,低エコー域は精巣から精巣上体へと連続していた.セミノーマとしては典型的ではなく,悪性リンパ腫にしてはエコーレベルが高いため,非セミノーマの腫瘍性病変を疑った.
【当院造影CT検査】
胸部から骨盤にリンパ節転移・遠隔転移を示唆する所見を認めなかった.両側胸膜に肥厚や石灰化があり,陳旧性胸膜炎が示唆された.
【臨床経過】
右精巣腫瘍(非セミノーマ疑い)の術前診断で,右高位精巣摘出術を実施した.病理組織で,精巣上半部や精巣上体に膿瘍と肉芽腫形成を伴う炎症を認めた.炎症性細胞浸潤は精巣下半部,精巣上体周囲結合織,精管,精巣動静脈周囲に及んでいた.中心壊死とラングハンス巨細胞の出現を伴う類上皮肉芽腫も少なからず見られたため,Ziehl-Neelsen染色を実施したが抗酸菌は検出されなかった.その後の追加検査でT-SPOT陽性が確認され,結核性肉芽腫性精巣上体精巣炎と診断した.なお,喀痰・尿培養検査ともに結核菌は検出されなかった.
【考察】
肉芽腫性精巣上体精巣炎は稀な疾患で,報告では50〜60歳代男性に多いとされている.結核や膀胱癌のBCG療法,ブルセラ症などの感染症による血行性感染が病因として推測されている.超音波検査上,精巣上体および精巣が腫大し,びまん性に低エコーを呈することが多い.一般に精巣腫瘍との鑑別は困難であるが,精巣上体体部から尾部が優位に腫大すること,精巣も巻き込んで低エコー域が広がること,陰嚢の皮膚や白膜が肥厚することが腫瘍との鑑別に有用との文献報告がある.
【結語】
稀な疾患である肉芽腫性精巣上体精巣炎を経験した.精巣腫瘍との鑑別は困難なことが多いが,中高年の精巣腫瘍を見たら,本疾患の可能性も念頭に置く必要がある.