山村 博, 南 汐里, 宮本 奈菜子, 坪野 寿恵, 山田 正則, 川嶋 政広

Hiroshi YAMAMURA, Shiori MINAI, Nanako MIYAMOTO, Kazue TSUBONO, Masanori YAMADA, Masahiro KAWASHIMA

金沢医科大学病院医療技術部診療放射線技術部門

The Medical Technology Part Medical Examination and Treatment Radiation Technology Section, Kanazawa Medical University Hospital

キーワード :

【背景・目的】
副甲状腺機能亢進症における画像診断の役割は腫大した副甲状腺の数と局在の情報を依頼医に提供することである．超音波検査（以下US）による局在診断能は高く，簡便で侵襲なく施行できる検査法として有用であるため画像診断としての役割は大きい．ただ質的診断としての重要な役割があるカラードプラ法で腫大腺がhypervascularに描出されることが多い1）という報告があるものの，実際の臨床では必ずしもカラーシグナルが描出されるわけではない．そのため形状やサイズが似ている腫大したリンパ節と鑑別することが困難な場合が少なくない．したがって腫大腺におけるカラーシグナルの描出傾向を評価することは有用と考え，当院における副甲状腺機能亢進症と診断された腫大腺のカラーシグナルとサイズについてUSによる画像評価を行った．
【対象・方法】
対象は2008年5月〜2014年10月までに副甲状腺機能亢進症と診断された患者73例，100腺（平均年齢53.7歳，男：女＝4：6，平均最大サイズ11.45mm，病態：原発性および続発性）．US画像のカラーシグナルを血流なし・周囲のみあり・周囲内部共にありの3段階に分け，長径サイズと共に評価した．US検査施行者は放射線科医および診療放射線技師，解析方法は後方視的解析を用いて評価を行った．
【結果】
カラーシグナルが周囲内部共に認めた割合は47％，周囲のみは35％，血流なしは18％であった．病的腫大腺の約80％以上に何らかのカラーシグナルを認めた．カラーシグナル別の平均サイズでは血流なしは7.1mm，周囲のみありは9.7mm，周囲内部共にありは14.6mmとカラーシグナルが豊富なほどサイズが優位に大きい結果となった．サイズ別のカラーシグナルではサイズ5mm以下ではすべての腫大腺にカラーシグナルを認めることはなく，15mm以上ではすべての腫大腺に周囲のみ又は周囲内部共にカラーシグナルを認めた．5mmから10mm未満のサイズではいろいろな血流シグナルのバリエーションが認められた．病態別のカラーシグナルと平均サイズにおける評価では原発性は二次性に比較し血流シグナル豊富で，サイズは有意に大きかった．
【考察】
今回の評価では先行文献1）と同様，病的腫大腺にカラーシグナルが多く描出される結果となった．カラーシグナルと腫大腺サイズの関係についてKakuta2）らは「腫大腺サイズが機能を反映する」と報告している．サイズが大きくなれば分泌機能が高くなり，内部の血流量が多くなる．つまり，サイズが大きいほど血流シグナルは豊富に描出すると考えられる．サイズ5〜10mmの腫大腺は全体の約半数を占め，血流シグナルのパターンも多彩であることから診断には注意が必要である．二次性は原発性より平均サイズが約5mm小さく，血流シグナルが描出されない場合が多いため，腫大したリンパ節と鑑別が困難になると予想される．
【結語】
カラーシグナルは腫大した副甲状腺サイズが小さいと内部に認めることが少なく，サイズが大きいほど周囲や内部に豊富に認める傾向を示した．症例によっては上下甲状腺動脈からの流入を確認できる場合があり，USによるカラードプラ法が有用であることが示唆された．
　
1）Onoda N, Kurihara S, Sakurai Yet al: Evaluation of blood supply to the parathyroid glands in secondary hyperparathyroidism compared with histopathology.Nephrol Dial Transplant 18（Suppl3）:iii34-37,2003
2）Kakuta T, Tanaka R, Kanai G, et al. Realationship Between the Weight of Parathyroid Glands and Their Secretion of Parathyroid Hormone in Hemodialysis Patient With Secondary Hyperparathyroidism. TAD.12:385-390,2008