Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 甲状腺
甲状腺 

(S668)

超音波検査が有用であった下咽頭梨状窩瘻孔の2例

Two cases of piriform sinus fistula detected by Ultrasonography

井本 勝治

Katsuji IMOTO

公立甲賀病院放射線科

Radiology, Kohka Public Hospital

キーワード :

【はじめに】
下咽頭梨状窩痩は先天性奇形の1つであり,1979年に急性化膿性甲状腺炎の原因として報告された.発熱,頸部の圧痛や腫脹が特徴であり,炎症が進行すると縦隔炎や咽後膿瘍を形成することもある.下咽頭梨状窩瘻の発生起源は第3,4,5咽頭嚢の遺残とされており,発生学的にそのほとんどが左側に生じる.今回我々は頸部腫脹を主症状として発症した小児下咽頭梨状窩瘻孔の二例を超音波検査で疑い診断し得たので若干の文献的考察を加えて報告する.
【症例1】
症例は4歳女児で主訴は頚部腫脹と疼痛.近医で頚部リンパ節炎と診断され抗生剤で加療が行われたが改善しないため当院小児科へ紹介.超音波検査で下咽頭梨状窩瘻孔が疑われたため,抗生剤などの保存的治療後に上部消化管造影を行ったところ瘻孔が確認された.
【症例2】
症例は12歳女児で主訴は頚部の軽度腫脹と疼痛.近医で保存的治療を受けていたが1週間改善しないため当院小児科へ紹介.症例1と同様に超音波検査で本症を疑い,後日に消化管造影で確認された.いずれの症例も手術のため他院へ紹介され,下咽頭梨状窩瘻が確認された.
【考察】
日常診療において小児頸部腫脹として頻度が高いものは感染,炎症性疾患に伴う反応性リンパ節腫大であるが,その鑑別診断は甲状舌管嚢胞,鰓裂嚢胞といった先天性嚢胞性腫瘤,頸部に頻度の高い血管腫やリンパ管腫,あるいは頻度は稀であるが,血液悪性腫瘍や神経芽腫等の悪性疾患といったように多岐にわたる.下咽頭梨状窩瘻孔は感染を伴わなければ症状を呈することはほとんど見られないが一旦感染を起こすと膿瘍を形成し治療が困難で,感染を繰り返すことによって初めて本症が疑われる.
よって本症の特徴を熟知し,小児画像診断の玄関となる超音波診断に携わるものにとって頸部腫脹を認めた場合,本疾患も念頭に置き迅速な診断と適切な治療がなされるべきである.
【結語】
今回,我々は下咽頭梨状窩瘻孔による化膿性甲状腺炎の2例を経験したので文献的考察を加えて画像診断を中心に報告する.