Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 乳腺
乳腺症例 

(S663)

乳腺紡錘細胞癌の1例

A case of spindle cell carcinoma of the breast

髙司 由理子1, 森 宣2, 松本 俊郎2, 髙司 亮2, 辻 浩一3, 岡田 さおり4, 増野 浩二郎6, 卜部 省悟5, 亀井 美玲7, 前田 徹8

Yuriko TAKAJI1, Hiromu MORI2, Shunro MATSUMOTO2, Ryou TAKAJI2, Kouichi TSUJI3, Saori OKADA4, Koujirou MASHINO6, Shogo URABE5, Mirei KAMEI7, Toru MAEDA8

1大分東部病院放射線科, 2大分大学医学部放射線医学講座, 3大分東部病院病理診断部, 4大分東部病院産婦人科, 5大分県立病院病理診断部, 6大分県立病院外科, 7新別府病院外科, 8大分県立病院放射線科

1Department of Radiology, Oita Tobu Hospital, 2Department of Radiology, Faculty of Medicine, Oita University, 3Department of Pathology, Oita Tobu Hospital, 4Department of Obstetrics and Gynaecology, Oita Tobu Hospital, 5Department of Pathology, Oita Prefectual Hospital, 6Department of Surgery, Oita Prefectual Hospital, 7Department of Surgery, Shinbeppu Hospital, 8Department of Radiology, Oita Prefectural Hospital

キーワード :

【はじめに】
乳腺の紡錘細胞癌は紡錘形の肉腫様の癌細胞からなる乳癌であり,本邦では乳癌取扱い規約第17版において特殊型に分類され,全乳癌のわずかに0.08〜0.72%を占めるに過ぎない稀な腫瘍である.今回我々は,乳腺紡錘細胞癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
【症例】
症例は85歳の女性である.右乳房のしこりを主訴に当院を受診した.触診では右C領域に示指頭大の腫瘤を触知し,マンモグラフィーでは,同領域に,ほぼ平滑な辺縁を持ち,一部分葉状の形態を呈する腫瘤を認めた.乳房超音波検査では,右乳腺C領域,乳頭より10時半の方向に35mmの位置に,25×22×22mmの,後方エコーの増強を伴う不整形低輝度腫瘤を認めた.腫瘤境界はほぼ明瞭・平滑であったが,外側および前方の側面に粗雑な部分があり,前方境界線の断裂を伴っていた.また,腫瘤の前方部分では,ドプラにて乳頭側より流入する血流信号が検出された.
超音波検査およびマンモグラフィー所見から,充実腺管癌や扁平上皮癌,気質産生癌などが疑われ,針生検が施行された.浸潤性乳管癌の化生癌疑いの診断で,右乳房全切除およびセンチネルリンパ節生検が施行された.病理所見では,腫瘍内に腺管形成はほとんど見られず,核異型は高度で,多形性をおびたものや紡錘形のものが認められ,上皮様の結合を示す部分が島状に点在していた.免疫染色ではEMA(epithelial membrane antigen)やサイトケラチンが上皮様の部分で陽性を示し,vimentinやSMAが紡錘形成分で陽性を示した.以上の所見より,紡錘細胞癌と病理学的に診断された.
【考察】
乳腺紡錘細胞癌は境界明瞭な腫瘤で内部に嚢胞形成を伴うことが多いとされる.本症例においてもエコー検査にて内部の嚢胞変性が明瞭に描出されており,診断に有用であると思われた.