Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 乳腺
乳腺症例 

(S662)

Flat Epithelial Atypiaと診断された症例の超音波像について

Ultrasonographic Appearance in a case of Flat Epithelial Atypia

中谷 守一

Shuichi NAKATANI

南大阪病院乳腺外科

Breast Surgery, Minami Osaka General Hospital

キーワード :

われわれは乳がん検診で視触診で要精査となり,精査によりFlat Epithelial Atypia(以下FEA)とされた1症例を経験した.マンモグラフィでは散在性(1,3)構築の乱れおよび広範なFADを認め,乳房超音波検査では(1,4)で右乳房には異常を認めなかったが,左乳房は全く異なり不均質な異常像,構築の乱れを指摘できた.すなわち左乳房上半部10:30〜15:00に複雑に錯綜する低エコー域と非形成性病変(写真)を認めた.造影乳房MRI検査では左乳房AEC領域に瀰漫性に拡がる腫瘤性病変を認めた.時間濃度曲線は3〜4型で悪性パターンを呈し浸潤性乳管癌とされた.翻って乳房超音波検査では明らかな腫瘤像は指摘できないものの,低エコー域が複雑に錯綜しており,最も異常と思われる低エコー部分に対して針生検術を施行した.結果はFEAであった.さてFEAは,1〜5層の軽度異型を伴う上皮細胞が乳管上皮細胞を置換して見られる病変で腺腔内に分泌型石灰化を伴うことが多い.そのためマンモグラフィ検診で微小円形や不明瞭な石灰化の集簇をきたして要精査となる例が多いとされる.また乳房超音波検査では不整形や微細分葉形の腫瘤像として検出されると報告されている.本例のマンモグラフィでは明らかな石灰化は指摘できず,乳房超音波検査では嚢胞を思わせる丸い低エコー域などが非常に複雑に存在しており構築の乱れなどが主で異常な腫瘤像の認識は困難であった.本例のように針生検でFEAが検出された際には切開生検や厳重な経過観察が必要とされるが,限局性病変が認識できる際には比較的容易であろうが,病変が非限局性かつ石灰化などを呈さない場合などは乳房撮影・乳房超音波ともでどの所見に着目して経過観察すればよいのか非常に困難であると思われる.FEAについては疾患概念が新しく癌発生の母地としての説明をはじめ経過観察には各種の画像診断モダリティを駆使した十分な配慮が必要と考えられるが,悪性病変の確認や良悪性鑑別には常に注意が必要と考えられる.