Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 乳腺
乳腺症例 

(S661)

切除範囲の同定に苦慮したnon-invasive apocrine carcinoma症例

Difficult decision of surgical margin in intra-operative ultrasonography for a non-invasive apocrine carcinoma of the breast: Report of a case

櫻井 健一1, 2, 藤崎 滋2, 原 由起子1, 2, 権田 憲士3, 富田 凉一2, 安達 慶太1, 藤原 麻子1, 前田 哲代1, 2, 榎本 克久1, 平野 智寛1

Kenichi SAKURAI1, 2, Shigeru FUJISAKI2, Yukiko HARA1, 2, Kenshi GONDA3, Ryouichi TOMITA2, Keita ADACHI1, Asako FUJIWARA1, Tetsuyo MAEDA1, 2, Katsuhisa ENOMOTO1, Tomohiro HIRANO1

1日本大学医学部外科学系乳腺内分泌外科分野, 2医療法人社団藤崎病院外科, 3埼玉医科大学国際医療センター消化器腫瘍科

1Nihon University School of Medicine, Division of Breast and Endocrine Surgery, Department of Surgery, 2Department of Surgery, Fujisaki Hospital, 3Department of Gastroenterological Oncology, International Medical Center, Saitama Medical University

キーワード :

乳腺原発のアポクリン癌は,腫瘍径が小さく,リンパ節転移のない場合,比較的予後良好とされる.非浸潤性アポクリン癌においても,切除断端を陰性とした上であれば,予後は通常のDCISと同様とされている.今回,我々は術中の超音波検査で病変の広がりが困難であった乳腺原発の非浸潤性アポクリン癌を経験したので報告する.
症例は67歳,女性.マンモグラフィ併用の対策型乳癌検診で,左M領域に淡く不明瞭な石灰化を集簇性に認め,Categiry 3と診断されて,2次検診目的に当科を受診した.当科で施行したマンモグラフィ検査では左乳房M領域に微小円形集簇性石灰化認めた.超音波検査では左乳房に明らかな病変は描出されなかった.左乳房A領域の石灰化病変に対しステレオガイド下に吸引式針生検術を施行した.病理組織診断は非浸潤性アポクリン癌と診断された.造影MRI検査では,左乳房A領域に針生検後の変化と思われる病変の周囲に区域性の造影効果を認めた.他臓器を検索し,転移のないことを確認後,Tis,N0,M0=Stage 0の診断で乳房円状部分切除術+センチネルリンパ節郭清術を施行した.術中超音波検査では,吸引式針生検時に挿入したマイクロマークと生検時の瘢痕は確認できたが,乳管内病変の有無や進展程度は同定困難であった.生検時の瘢痕を中心に1.5cmのマージンを確保して乳房円状部分切除術を施行した.切除標本の軟線撮影で石灰化部位が含まれていることを確認し,術中迅速診断で断端の陰性を確認した後,手術を終了した.永久標本の病理組織診断は非浸潤性乳管癌,病変の広がり2.5×2.0 cm,センチネルリンパ節は転移なし,Nuclear grade 1(Nuclear atypia 2, Mitotic count 1),ly(-),v(-),s(-),f(-),ER(-),PgR(-),HER-2 Score 2(Fish法で陰性),Ki-67 5%,切除断端陰性と診断され,pStageはTis,N0,M0=Stage 0であった.
術後経過は良好であり,第4病日に退院した.Triple negative typeであるため,adjuvant therapyは施行していないが,術後2年6ヶ月後の現在,無再発生存中である.
本症例は超音波検査で構築の乱れ周囲に目立った拡張乳管等は認めなかった.近年,画像診断の精度が著しく向上してきたが,本症例のように判断が難しい症例も散見される.現時点では,術中迅速診断で断端を確認するステップは省略できないものと考えられた.