吉川 和明¹, 栗栖 泰郎², 長崎 真琴³, 森 宣⁴, 高橋 節², 渡部 裕志², 永井 聡², 西谷 有子², 前田 陽子¹

Kazuaki YOSHIKAWA¹, Yasurou KURISU², Makoto NAGASAKI³, Hiromu MORI⁴, Sadamu TAKAHASHI², Hiroshi WATANABE², Satoshi NAGAI², Yuko NISHITANI², Yoko MAEDA¹

¹国立病院機構浜田医療センター乳腺科, ²国立病院機構浜田医療センター外科, ³国立病院機構浜田医療センター病理, ⁴大分大学医学部放射線医学講座

¹Breast Radiology and Treatment, Hamada Medical Center, ²Surgery, Hamada Medical Center, ³Pathology, Hamada Medical Center, ⁴Radiology, Oita University Faculty of Medicine

キーワード :

【はじめに】
超音波装置の性能は短期間に着々と進歩を遂げているが，表在臓器である乳腺での弱点としては，良悪の判定を要する石灰化の描出が不十分なことやエコー減衰による深部感度の低下が挙げられる．その中でCMTUプローブであるMappieは，病変部位に合わせてビーム形状を最適化するため，深部や減衰の大きな組織においても空間分解能や方位分解能に優れる探触子とされている．そこで今回は石灰化とエコー減衰について，臨床的にその性能を評価することを目的とする
【対象と方法】
石灰化は①マンモグラフィで分泌型と考えられる石灰化88例，エコー減衰は②正常；乳頭直下30例（両側で60例）と，③病変；生検で判明したfibrous diseaseの9例を対象とした．通常用いる音響動作周波数帯5〜13MHzまたは7〜18 MHzの探触子（L74またはL75，以下Rutin）とMappieとで病変部位を同方向に走査して，①は石灰化の描出とその存在の確信度，②③はエコーが減衰する部位での内部構造の認識の程度について，超音波専門医と担当技師が視覚的に評価した．
【結果】
①石灰化の描出自体はRutin：Mappie＝53.4％：55.7％と差はないが，確信度におけるスコアは2.5：3.5とMappieが優れていた．②乳頭下では2.4：3.9と有意差が明らかで，③病変内でも全例でMappieの方で良好に評価できた
【考察】
石灰化の存在診断についてはマンモグラフィをもとに丹念に走査することで半数以上の症例で描出可能であるが，確信度については，Rutinで半信半疑でもMappieを追加することで確信し，再度Rutinで走査してなるほどと納得することは多い．続けて超音波ガイド下生検を実施するときは軽量なRutinを用いるため，Mappieはメルクマールの石灰化を決定する上で重要となる．エコー減衰に関して，乳頭下で斜めにビームを入れても描出が不良な場合は積極的にMappieに切り替え併用することが望ましい．またfibrous diseaseの診断にあたり内部構造を評価できれは生検を回避することも可能と考えた
【結語】
石灰化の存在診断が不確実なときやエコー減衰の強い部位・病変の評価にMappieの有用性は非常に高いと考えられる．