Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 乳腺
乳腺 

(S659)

男性乳癌の超音波所見

Imaging of Ultrasonography with Breast Cancer in male

清松 裕子1, 坂東 裕子2, 澤 文1, 古屋 舞1, 池田 達彦2, 井口 研子2, 文 由美1, 鯨岡 結賀1, 原 尚人2

Hiroko KIYOMATSU1, Hiroko BANDO2, Aha SAWA1, Mai FURUYA1, Tatsuhiko IKEDA2, Akko IGUCHI-MANAKA2, Yumi MUN1, Yuka KUJIRAOKA1, Hisato HARA2

1筑波大学附属病院乳腺甲状腺内分泌外科, 2筑波大学医学医療系

1Department of Breast and Endocrine Surgery, University of Tsukuba Hospital, 2Department of Breast and Endocrine Surgery, University of Tsukuba

キーワード :

【背景】
男性の乳腺疾患はそのほとんどが女性化乳房症であり,男性乳癌は乳癌全体の約1%と稀である.しかし初診時の身体所見は腫瘤の自覚などである場合が多く,女性化乳房症と類似しており診断が困難なことが多い.乳房超音波検査は簡便かつ低侵襲で非常に有用な手段ではあるが,経験に左右される点も多い.今回我々は症例数の少ない男性乳癌の超音波所見を検討し,女性化乳房症との違いを含めて検討した.
【対象・方法】
2007年1月から2014年12月までの8年間に当院で男性乳癌と診断され手術をおこなった6例を対象とした.超音波診断装置は東芝メディカルシステムズAplioXV SSA-770A, SSA-700A, SSA-790A,日立アロカHI Vision900,GEヘルスケアLOGIQ E9を使用した.超音波検査は,はじめに体表超音波検査士2名を含む6名の臨床検査技師が施行し,その場で超音波専門医6名の医師が検査を施行するダブルチェック方式としている.
【結果】
症例の平均年齢は71.3歳(60-81歳).発見契機は全例しこりの自覚であり,初診時の身体所見ではほぼ全例に何らかの皮膚所見(ひきつれや発赤等)を認めていた.腫瘍サイズは超音波での計測で平均17.5mm(13.6-20.7mm),腋窩リンパ節転移は6例中2例に認めていた.腫瘤は乳頭直下にあるものが2例であったが,乳頭直下よりやや外れているものが4例で,その平均乳頭腫瘤間距離は超音波上5.4mm(3.1-7.1mm)であった.超音波所見の特徴として,患側乳房に比較的境界明瞭な腫瘤像を形成し,内部エコーはやや低エコー,血流豊富な腫瘤であった.またエラストグラフィが行われた症例では全例腫瘤は固く描出されていた.全例針生検にて浸潤性乳管癌と診断され,手術を実施し,腋窩リンパ節に転移陽性であったものが半数(3例)であった.
【考察】
女性化乳房症の所見も乳頭直下の腫瘤触知と同部位の低エコー像であるが,触診所見に比して超音波上の低エコー域は腫瘤像を呈さず,その低エコー域は腫大乳腺全体のため,境界が不明瞭ととられることが多い.これに対し今回検討した男性乳癌の超音波所見は,触診所見に一致した比較的境界明瞭な腫瘤像が得られていた.視触診所見の異常に加え,腫瘤を触知する位置が乳頭直下から外れていることも男性乳癌を示唆する所見と考えられる.以上を踏まえ文献的考察を加えて検討した.