Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 乳腺
乳腺 

(S659)

乳腺腫瘤性病変の良悪性鑑別に対するVTIQのパターン分類

VTIQ of pattern classification for benign and malignant differentiation of mammary gland mass lesion

磯部 幸子1, 戸崎 光宏2, 松本 沙知子1, 金澤 幹子1, 斉藤 雅博3

Sachiko ISOBE1, Mitsuhiro TOZAKI2, Sachiko MATSUMOTO1, Mikiko KANAZAWA1, Masahiro SAITO3

1亀田京橋クリニック臨床検査室, 2亀田京橋クリニック放射線科, 3シーメンス・ジャパンクリニカルマーケティング,コラボレーション部

1Clinical Laboratory, Kameda Kyobashi Clinic, 2Radiology Department, Kameda Kyobashi Clinic, 3Clinical Marketing and Collaboration Division, Siemens Japan

キーワード :

【目的】
現在,乳腺エラストグラフィは歪みを画像化する定性的判定,硬さを数値化して評価する定量的判定が存在し,手法や原理,取得する画像も異なる.Virtual Touch IQ(VTIQ:ACUSON S3000 Siemens社製)はROIの中で発生したshear wave伝搬速度(SWV)を多点測定し速度分布をカラーマッピングイメージとして表示している.また表示モードはSWVの速度分布をカラー表示するVelocityモードのほかに計測速度の信頼性を評価する3種類の補助的モードが存在し4種類の表示モードを持っている.さらにイメージ上に計測カーソルを合わせるとSWVが数値表示され定量評価が可能である.VTIQは2013年からSWVに重点を置いた有用性の検討は報告されているが視覚的分類に対する報告はされていない.今回VTIQのVelocityモードで乳腺充実腫瘤の良悪性診断における視覚的分類の有用性を検討した.
【対象と方法】
2013年8月から2014年5月に病理学的診断の得られた,もしくは経過観察が施行された充実性腫瘤193例を対象とした.VTIQの撮像において病変と正常組織が含まれるようにROIを移動させ,表示速度レンジはVmax6.5m/s,Vmin0.5m/sに設定しVelocityモードで視覚的にパターン分類を試みた.SWV評価の信頼性の確認はQualityモードを用いてROI全体の色調(信頼性が高い領域は緑,低い領域は黄,赤)を視認した.次にSWVはVelocityモードで最も速い領域(赤い領域)の視認後,計測カーソル(2mm×2mm)を移動させてSWVの計測をし,平均速度を比較した.
【結果】
VTIQは6つのパターンに分類が可能であった.Pattern1:病変に周囲と異なるカラー表示が認められない(良性30例,悪性7例).Pattern2(artifact pattern):カラー表示が病変を越えて縦に策状に認められる(良性41例,悪性5例).Pattern3:病変内部が均一に緑色を示す(良性12例,悪性8例).Pattern4:病変の辺縁に限局したカラー表示が認められる(良性5例,悪性30例).Pattern5:病変中心部が赤色を示す(悪性14例).Pattern6:病変内部に異なるカラー表示が不均一に混在する(悪性41例).Pattern5,6は全例悪性であった.Pattern1,Pattern 2,Pattern 3を良性,Pattern4,Pattern5,Pattern6を悪性とした場合に感度82%(86/105),特異度94%(83/88),精度88%(169/193)であった.SWVは良性の平均が2.78m/s,悪性の平均が5.95m/sで統計学的に有意差を示した(p<0.0001).偽陰性は非浸潤性乳管癌10例,硬癌6例,浸潤性小葉癌1例,管状癌2例であった.このうちの9病変は浸潤癌で,SWVの平均は3.07m/s(2.50m/s−3.86m/s)であった.良性病変のSWVの比較では統計学的な有意差が認められなかった(p=0.0311).
【考察】
これまでVTIQはSWVの定量的判定に重点をいて発表,報告をしてきたが,カラー画像を利用した視覚的に評価する定性的判定方法の確立が重要と考えられた.VTIQは測定条件を一定にすることで視覚的にパターン分類をすることが可能で,感度82%(86/105),特異度94%(83/88),精度88%(169/193)であり,良悪性の鑑別に有用な指標であると考える.また偽陰性19病変のSWVは比較的遅い速度で,偽陰性病変に対してSWVを追加する意義は見出せなかった.Bモード画像と合わせた評価もしくは追加のアプリケーション検査と組み合わせた評価方法の検討が必要と考える.
【結論】
VTIQのVelocityモードを利用したカラーパターン分類は良悪性の鑑別に有用であると考えられた.しかし偽陰性,陽性病変が存在するためVelocityモード以外の表示モード画像やVTIQ以外の画像を組み合わせた評価方法の更なる検討が必要と考える.