今野 佐智代¹, 高田 悦雄¹, 川又 美咲¹, 江尻 夏樹¹, 高瀬 直敏¹, 吉原 明美¹, 永田 仁^{1, 2}, 竹川 英宏^{1, 3}

Sachiyo KONNO¹, Etsuo TAKADA¹, Misaki KAWAMATA¹, Natsuki EJIRI¹, Naotoshi TAKASE¹, Akemi YOSHIHARA¹, Hitoshi NAGATA^{1, 2}, Hidehiro TAKEKAWA^{1, 3}

¹獨協医科大学病院超音波センター, ²獨協医科大学第2外科, ³獨協医科大学神経内科脳卒中部門

¹Center of Medical Ultrasonics, Dokkyo Medical University School of Medicine, ²Second Department of Surgery, Dokkyo Medical University, ³Stroke Division, Department of Neurology, Dokkyo Medical University

キーワード :

【目的】
腫瘍の悪性診断では2Dリアルタイム組織エラストグラフィー（2D RTE）の有用性が知られている1），良性と診断されたうち約15％が悪性腫瘍であると報告されている2）．一方，3D探触子は立体的に観察することが可能である．われわれは3D探触子を用いたリアルタイム組織エラストグラフィー（3D RTE）が乳腺腫瘍の良悪性の鑑別に有用か検討した．
【対象と方法】
乳腺腫瘤を認めた連続166例を対象とした．良悪性の診断は細胞診または組織診で行なった．なお超音波診断上良性と診断され，2年以上経過観察し所見に変化がないものは良性と判断した．腫瘤の分類はWHOに準じて行なった．超音波診断はHIVISION Ascendus（Hitach-Aloka Medical）のリニア型探触子（EUP-L75，EUP-LV74）を使用した．2D RTEはItohら1）の報告に準じ，elasticity score（ES）により5つのスコアを評価した．3D RTEによる分類は腫瘤内に不明瞭な境界で青色に描出されるものをType 1，腫瘤内が境界明瞭な青色に描出されるものをType 2，腫瘤を超えて不規則な辺縁で青色に描出されるものをType 3と定義した．統計は2D RTEおよび3D RTEにおける悪性腫瘍診断の感度，特異度，正診率を求め，さらにカイ二乗検定および単変量のロジスティック回帰分析を行なった．
【結果】
良性腫瘍は119例，悪性腫瘍は47例であった．2D RTEのESが3以上の場合，悪性腫瘍の診断率は，感度95.4％，特異度68.1％，正診率75.9％であり，ES 4以上では，感度80.9％，特異度91.6％，正診率88.6％であった．3D RTEがType 2または3を示した場合の悪性腫瘍の診断率は，感度95.7％，特異度73.1％，正診率79.5％であり，Type 3の診断率は感度89.4％，特異度86.6％，正診率87.4％であった（p＜0.0001）．一方，2D RTEのESが3を呈した35例（良性腫瘍28例，悪性腫瘍7例）で3D RTEがType 3を示した例の悪性腫瘍の診断率は，感度71.4％，特異度82.1％，正診率80.0％であった（p＜0.0001）．ロジスティック解析では2D RTEのESが4以上の場合，悪性腫瘍のオッズ比は46.0倍（95％CI：17.4-121，p＜0.0001），3D RTEでType 3の例では，オッズ比54.1倍（95％CI：18.6-157，p＜0.0001）と3D RTEの方が有用であった．
【考察と結論】
本検討では2D RTEによる良悪性の診断は過去の報告と同様に有用であり，とくにES 3以上では悪性を疑う必要がある．しかしES 3を呈した例に細胞診や組織診を行なうことは臨床上判断に苦慮する．本結果ではこれらの症例に対して3D RTEを併用することで悪性腫瘍の診断が可能であることが示された．さらに2D RTEと3D RTEの比較では，両者とも悪性腫瘍の診断に有用であったが，3D RTEの所見のほうが優れている可能性が示唆された．
【参考文献】
1）Itoh A, Ueno E, Tohno E, et al. Radiology. 2006;239:341-50.
2）Itoh A, Ueno E, Matsumura T, et al. MEDIX. 2006;45:10-15.