Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 産婦人科
母体・婦人科 

(S654)

産後に診断に至った妊娠合併子宮頸癌の1例

Cervical cancer in pregnancy diagnosed after delivery: a case report

宮井 雄基, 宇野 枢, 田野 翔, 吉原 雅人, 眞山 学徳, 鵜飼 真由, 近藤 真哉, 古株 哲也, 岸上 靖幸, 小口 秀紀

Yuki MIYAI, Kaname UNO, Sho TANO, Masato YOSHIHARA, Michinori MAYAMA, Mayu UKAI, Shinya KONDO, Tetsuya KOKABU, Yasuyuki KISHIGAMI, Hidenori OGUCHI

トヨタ記念病院産婦人科

Department of Gynecology and Obstetrics, Toyota Memorial Hospital

キーワード :

【緒言】
子宮頸癌は妊娠を契機に発見されることがあり,晩婚化などに伴い今後の妊娠合併子宮頸癌の増加が予想される.妊娠によって子宮頸癌が悪化することはないとされるが1),診断や治療方針の決定に苦慮することも少なくない.今回我々は,妊娠中にcervical intraepithelial neoplasia 3(CIN3)と診断し,産後に子宮頸癌の診断に至り,経腟超音波断層法で後方視的に異常所見が確認された症例を経験したので報告する.
【症例】
34歳,未経妊.既往歴に特記すべき事項はない.human papillomavirus strain 18陽性のCIN3に対し,子宮腟部レーザー蒸散術を施行後13ヵ月で自然妊娠が成立した.術後定期的に施行していた子宮頸部細胞診ではhigh-grade squamous intraepithelial lesion(HSIL)が持続していたため,妊娠7週時にコルポスコピーおよび狙い組織診を施行し,CIN3と診断した.産婦人科診療ガイドライン産科編及び子宮頸癌治療ガイドラインに基づき,CIN3を最終診断とし,妊娠継続,定期的細胞診施行の方針とした.妊娠16,26,36週に施行した子宮頸部細胞診は,ASC-H,HSILであった.妊娠経過は順調で,妊娠40週4日に前期破水し,翌日より分娩誘発を開始したが,子宮頸管は異常に硬く開大不良であった.陣痛が発来せず,母体に感染徴候が出現したため,緊急帝王切開術を施行した.分娩時の内診所見から子宮頸癌を疑い,産後20日目にコルポスコピー及び狙い組織診を施行した.病理組織診断はCIN3であったが,病変の広がりから間質浸潤の可能性が否定できず,産後54日目に子宮頸部円錐切除術を施行した.病理組織診断はinvasive squamous cell carcinoma(SCC)であった.StageIB1 SCC of the Uterine Cervixの術前診断で,産後78日目に広汎子宮全摘出術を施行した.病理組織診では,腫瘍は角化傾向を伴う異型扁平上皮細胞で構成され,間質への浸潤増殖,脈管への侵襲を認めた.また,両側内腸骨及び左総腸骨リンパ節に転移を認めた.病理組織診断はSCC of the Uterine Cervix, keratinized type(pT1b2N1M0)で,同時化学放射線療法を開始した.外照射(全骨盤:50.4 Gy)と5-Fluorouracil,Cisplatin併用化学療法を6コース施行し,術後10ヵ月経過した現在,再発徴候なく外来経過観察中である.妊娠経過中に施行した経腟超音波断層法を後方視的に確認したところ,妊娠28週までは子宮頸管に明らかな病変を指摘できなかったが,妊娠36週時には,子宮頸管内に腫瘤と思われる高輝度領域を認めた.
【結論】
妊娠初期検査に子宮頸部細胞診が含まれている現在では,妊娠が初期子宮頸癌の発見の契機ともなっている2).子宮頸管内にのみ浸潤性病変を伴う子宮頸癌では,子宮腟部の狙い組織診での診断は困難であり,経腟超音波断層法がその診断に有用と考えられた.
【文献】
1)Donegan WL. Cancer and pregnancy. CA Cancer J Clin 1983;33:194-214.
2)小林裕明.子宮頸癌の治療の変遷と今後の展開6.早期子宮頸癌に対する妊孕性温存療法−妊娠合併子宮頸癌の取り扱いを含めて.産と婦2013;55:1317-24.