Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 産婦人科
流早産・分娩 

(S651)

経会陰超音波断層法における各パラメータの分娩時期予測に対する有用性の比較

Comparison between the values of parameters assessed by intrapartum transperineal ultrasound to predict scan to delivery interval

山本 亮, 石井 桂介, 米谷 直人, 中嶋 えりか, 光田 信明

Ryo YAMAMOTO, Keisuke ISHII, Naoto YONETANI, Erika NAKAJIMA, Nobuaki MITSUDA

大阪府立母子保健総合医療センター産科

Obstetrics, Osaka Medical Center and Research Institute for Maternal and Child Health

キーワード :

【目的】
分娩時の経会陰超音波断層法による児頭下降度評価は,最終的な分娩様式との関連が示唆されている.本研究の目的は,分娩第2期に経会陰超音波断層法を用いて計測したangle of progression(AoP),progression distance(PD),head direction(HD)において,分娩までの時間の予測に有用なparameterを明らかにすることである.
【方法】
2014年6月から4ヶ月間に後方視的観察研究として行った.妊娠36週以降の頭位経腟分娩中に分娩第2期まで進行し,経会陰超音波断層法による評価が行われた単胎妊婦を対象とした.内診で子宮口全開大を確認した直後に,児頭及び母体恥骨を含む3D volume dataをVoluson S8®(GE healthcare, UK)を用いて採取した.単一の検者がSonography based Volume Computer Aided Display labor(Sono VCAD labor®)を用いて,矢状断面でAoP,PDおよびHDを計測した.AoPは恥骨中心線と恥骨下端から児頭骨への接線との角度,PDは恥骨下端からの垂線と児頭骨最下端までの距離,HDは恥骨下端からの垂線と児頭大横径に直行する線との角度とした.超音波断層法施行後60分以内の分娩に対するAoP,PDおよびHDの調整オッズ比を,分娩時年齢,初産,分娩時のBMI,オキシトシン使用の有無,硬膜外麻酔使用の有無,超音波データ採取時の後方後頭位の有無で補正し算出した.有意な超音波parameterについては受診者動作特性(ROC)曲線を用いて最適なcut-off値を算出し,そのcut-off値における信頼度を検討した.
【結果】
対象163例のうち画像評価が不能であった48例と分娩時間不明の1例を除外し,114例について解析した.分娩週数の中央値は39週(37-42週)であり,75%が初産婦であった.分娩時年齢および分娩時BMIの中央値は,それぞれ32歳,24.1であった.経会陰超音波断層法施行時にオキシトシンおよび硬膜外麻酔を使用していた頻度は,それぞれ47%,14%であった.分娩様式の内訳は経腟分娩が95例,器械分娩が18例,緊急帝王切開が1例であった.超音波断層法施行から分娩までの時間の中央値は60分(4-296分)であり,56例(49%)が超音波断層法施行後60分以内に分娩となった.60分以内の分娩に対するAoP,PD,HDの調整オッズ比はそれぞれ,1.32(95%信頼区間:1.06−1.66,p=0.012),1.40(95%信頼区間:1.03−1.94,p=0.031),1.55(95%信頼区間:1.17−2.14,p= 0.0016)であった.AoP,PD,HDそれぞれのROC曲線下面積(AUC)は0.62,0.60,0.57であり,最適なcut-off値は130°,5cm,130°であった.これらのcut-off値における各parameterそれぞれの感度は70%,43%,50%,特異度は50%,81%,60%,陽性適中率は57%,69%,55%,陰性適中率は63%,60%,55%,陽性尤度比は1.4,2.3,1.3,陰性尤度比は0.6,0.7,0.8であった.
【考察・結論】
経会陰超音波断層法によるAoP,PD,HDはparameter計測後60分以内の分娩の独立した予測因子であり,交絡因子を考慮したオッズ比は同等であった.最適なcut-off値における各parameterの信頼度からは,HDの有用性はAoPおよびPDに比べて低いかもしれない.