田中 啓, 宮崎 典子, 山田 研二, 片山 素子, 松島 実穂, 井澤 朋子, 酒井 啓治, 岩下 光利

Kei TANAKA, Noriko MIYAZAKI, Kenji YAMADA, Motoko KATAYAMA, Miho MATSUSHIMA, Tomoko IZAWA, Keiji SAKAI, Mitsutoshi IWASHITA

杏林大学産科婦人科

Department of Obstetrics and Gynecology, Kyorin University School of Medicine

キーワード :

【目的】
子宮頚管短縮を伴った双胎妊娠における，子宮頚管長・癌胎児性フィブロネクチンの早産予測マーカーとしての有用性を検討する．
【方法】
子宮頚管長25mm未満を理由に切迫早産入院管理（妊娠22〜29週）となった双胎妊娠のうち，予定帝王切開または陣痛発来・前期破水で早産となった症例を対象とした．入院時に子宮口開大・性器出血・前期破水を伴う症例，双胎間輸血症候群を合併した症例，子宮頸管縫縮術を施行した症例は除外した．入院時に経腟超音波断層法で測定した子宮頚管長（CL），同時に採取した腟分泌物中の癌胎児性フィブロネクチン値（fFN）を後方視的に調査した．「妊娠34週未満の早産」に対するⅰ）CL，ⅱ）fFNおよびⅲ）CL＋fFN併用の感度，特異度，陽性的中率（PPV），陰性的中率（NPV），陽性尤度比（LR+），陰性尤度比（LR-），相対危険度（RR）をそれぞれ算出した．入院後の妊娠延長期間についてKaplan-Meier法を用いて解析し，ⅰ）〜ⅲ）のそれぞれについてlog-rank検定を行った．
【結果】
対象となった45症例中，10例（22.2％）が妊娠34週未満に早産分娩となった．全症例でCLおよびfFNが入院時に測定され，切迫早産治療として子宮収縮抑制剤投与，腟洗浄（温生理食塩水），ウリナスタチン・メトロニダゾール腟内投与が行われた．
ⅰ）CLについてROC曲線を用いて解析すると，「CL＜19mm」をカットオフとした場合，陽性20例（44％），感度0.80（95％CI: 0.53-0.94），特異度0.67（0.58-0.70），PPV 0.40（0.26-0.47），NPV 0.92（0.81-0.98），LR+ 2.33（1.26-3.11），LR- 0.30（0.09-0.82），RR 5.0（1.40-19.9）となった．
ⅱ）「fFN＞50ng/mL」を陽性とすると，陽性数12例（27％），感度0.30（0.12-0.55），特異度0.74（0.69-0.82），PPV 0.25（0.10-0.46），NPV 0.79（0.73-0.87），LR+ 1.17（0.37-3.00），LR- 0.94（0.55-1.28），RR 1.18（0.36-3.42）となった．
ⅲ）「CL＜19mmかつfFN＞50 ng/mL」を陽性とすると，陽性数7例（16％），感度0.30（0.12-0.50），特異度0.89（0.83-0.94），PPV 0.43（0.17-0.72），NPV 0.82（0.77-0.87），LR+ 2.63（0.71-8.91），LR- 0.79（0.527-1.06），RR 2.32（0.73-5.48）となった．
ⅰ）〜ⅲ）のうち「CL＜19mm」のみが「妊娠34未満の早産」と有意に関連があった．CL＜19mm群・CL≧19mm群いずれにおいてもfFNによる早産率の差は認められなかった．CL＜19mm群は，CL≧19mm群に対して有意に妊娠延長期間が短く（8.5±0.9週vs 11.4±0.4週），fFN，CL+fFNでは妊娠延長期間に有意差は認めなかった．
【考察】
妊娠30週未満の双胎妊娠に対してCL19mm未満は比較的有効な早産予測マーカーであるが，単独では十分でない．fFNを組み合わせることの有用性は確認できなかった．