Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎盤・臍帯 

(S648)

妊娠経過中に経腹超音波断層法にて観察できた胎盤絨毛間腔内らせん動脈ジェット流

A spiral artery jet in a placental lake

塩﨑 有宏, 米田 徳子, 小野 洋輔, 安田 一平, 小林 睦, 副田 翔, 稲坂 淳, 米田 哲, 斎藤 滋

Arihiro SHIOZAKI, Noriko YONEDA, Yousuke ONO, Ippei YASUDA, Mutsumi KOBAYASHI, Sho SOEDA, Jun INASAKA, Satoshi YONEDA, Shigeru SAITO

富山大学産科婦人科

Obstetrics & Gynecology, University of Toyama

キーワード :

【はじめに】
妊娠初期では胎盤床の脱落膜に侵入してきた絨毛外トロホブラスト細胞によって,らせん動脈血管壁の筋弾性線維層が剥離・置換するため,血管抵抗が低下し,絨毛間腔に流入するらせん動脈は拡張する.さらに妊娠中期以降になると胎盤の末梢血管抵抗が減少し,らせん動脈から絨毛間腔への流入血液量が多くなるため,超音波検査時にらせん動脈の血流を見ることはまれである.今回妊娠37週の健診時に偶然placental lake内にジェット流を認め,血流波形から絨毛間腔内に噴出するらせん動脈と考えられた症例を経験したので報告する.
【症例】
24歳 1回経妊0回経産(自然双胎妊娠,初期に胎児心拍消失した後に左下肢深部静脈血栓症と肺塞栓症が出現,ヘパリン+下大静脈フィルターによる加療後,ワーファリンによる抗凝固療法).その後精査でアンチトロンビン(AT)欠乏症,Protein S欠乏症と判明.今回妊娠反応陽性後,ワーファリンを中止し低用量アスピリン+ヘパリンにAT製剤(週3回)を併用して妊娠管理を行った.胎児発育は良好で,羊水量やドップラー血流波形も異常なく,妊娠高血圧症候群の徴候を認めなかった.妊娠37週の妊婦健診時,前壁付着の胎盤内に直径2.49cm,類円形のplacental lakeを認めた.Bモードにて内部に乱流像を認めたため,カラーフローをかけたところ,胎盤母体面から斜めに胎児面に向かって噴出する動脈流(ジェット流)を認めた.このジェット流をカラードプラー法で観察したところ,母体心拍数(88/分)に一致した拍動性の脈波であったことから,子宮内膜から絨毛間腔に向かって噴出するらせん動脈と診断した.またこのジェット流のResistance Indexは0.7,最高血流速度は10cm/sであった.妊娠39週3日陣発入院し,3208gの女児を正常経腟分娩.産褥期はエノキサパリン,ワーファリンにて加療し,母児ともに無事退院した.
【まとめ】
Placental lake内に噴出するらせん動脈ジェット流のヒトでの報告例はほとんどなく,妊婦健診時に偶然観察することができた