Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎盤・臍帯 

(S647)

妊娠高血圧症候群を合併した胎児発育不全症例の妊娠初期の超音波所見に関する検討

First trimester ultrasound findings in fetal growth restriction with pregnancy induced hypertension

新垣 達也, 長谷川 潤一, 仲村 将光, 瀧田 寛子, 濱田 尚子, 松岡 隆, 関沢 明彦

Tatsuya ARAKAKI, Junichi HASEGAWA, Masamitsu NAKAMURA, Hiroko TAKITA, Shoko HAMADA, Ryu MATSUOKA, Akihiko SEKIZAWA

昭和大学産婦人科学講座

Department of Obstetrics and Gynecology, Showa University School of Medicine

キーワード :

【目的】
妊娠高血圧症候群(PIH)に合併した胎児発育不全(FGR)では,FGR単独の症例と比較して,妊娠初期の絨毛発育の影響も受けている可能性がある.FGR単独例とPIH合併のFGR例の妊娠初期の超音波検査による絨毛や血流所見の違いを明らかにする目的で検討を行った.
【方法】
2011-2013年に当院で妊娠11-13週に健診を受け,妊娠24週以降に分娩した妊婦を対象とした.胎児形態異常および染色体異常の症例は除外した.妊娠11-13週に3D超音波(Voluson E8; GE Health care, Japan)により絨毛体積,子宮動脈血流を評価した.絨毛体積は,絨毛膜有毛部がすべて取り込まれるように関心領域および角度を調節しボリュームデータを取り込み,VOCAL(Virtual Organ Computed-acid Analysis)法で測定した.その後に出生体重10%タイル未満で出生したFGRを,PIHを合併したPIH-FGR群,合併してないnp-FGR群の2群に分け,control群(出生体重10%タイル以上および正常血圧を呈した群)と超音波計測値を比較した.なお,本研究は当院の倫理委員会の承認の下,同意を得て行った.
【結果】
対象は1361例を検討した.Control群1195例(87.5%),np-FGR群89例(6.5%),PIH-FGR群12例(0.9%)それぞれの,分娩週数の中央値(範囲)は39週2日(24週4日-41週6日),39週3日(30週3日-41週4日),36週1日(28週4日-40週0日)*,出生体重(g)は3035g(737-4483),2453g(2064-2943)*,1984g(805-2415)*,出生体重(SD)は0.17(-1.27-3.54),-1.68(-1.28--2.92)*,-1.86(-1.37--3.51)*であった.Control群,np-FGR群,PIH-FGR群における初期の絨毛体積の中央値(範囲)は,それぞれ,62(14-162),50(19-123)*,39(24-70)*cm3,子宮動脈PIは1.8(0.6-4.1),2.0(0.7-3.4)*,2.0(0.9-3.2),CRLは65(41-92),62(45-84)*,63(46-75)mmであった(*: p<0.05 vs. control群).
【考察】
PIHを合併したFGRと,しなかったFGR群でいずれも,妊娠初期の胎盤体積が小さく,子宮動脈PIが高い傾向にあり,胎児形態異常のないFGRは,PIHを合併してもしなくても,同様な初期からのらせん動脈や絨毛発育の障害に起因している可能性を確認した.しかし,PIHを合併した場合のほうが,絨毛体積はより小さく,その影響は大きいと考えられた.一方,np-FGR群では,CRLが小さく,より妊娠初期から成長が緩慢である可能性が示唆された.