Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児異常② 

(S639)

胎児超音波検査にて静脈管の異常を認めた11例の臨床的特徴

Clinical features of 11 cases of abnormal ductus venosus detected by fetal ultrasonography

川村 裕士1, 笹原 淳1, 馬淵 亜希1, 太田 志代1, 川口 晴菜1, 山本 亮1, 稲村 昇2, 石井 桂介1, 光田 信明1

Hiroshi KAWAMURA1, Jun SASAHARA1, Aki MABUCHI1, Shiyo OTA1, Haruna KAWAGUCHI1, Ryo YAMAMOTO1, Noboru INAMURA2, Keisuke ISHII1, Nobuaki MITSUDA1

1大阪府立母子保健総合医療センター産科, 2大阪府立母子保健総合医療センター小児循環器科

1Obstetrics, Osaka Medical Center and Research Institute for Maternal and Child Health, 2Pediatric Cardiology, Osaka Medical Center and Research Institute for Maternal and Child Health

キーワード :

【目的】
静脈管(Ductus venosus; DV)は胎児特有の血管で,胎盤からの酸素化された血液を門脈や肝臓を介さずに直接下大静脈へ流入させるバイパスである.DVは括約筋による圧調節能を有し,右心系への血流量を調節している.近年,DV欠損と染色体異常および胎児心疾患との関連を示唆する報告が散見される.本研究は,胎児期にDVの欠損や走行異常が疑われた症例の臨床的特徴を明らかにすることを目的とした.
【対象と方法】
2008年1月から2014年7月までに,当院で胎児超音波検査にてDV欠損,DV走行異常が疑われた症例を対象とした.カラードプラ法にてDV血流が描出されないものを欠損,DV血流を認めるが下大静脈(Inferior vena cava; IVC)への正常な位置での流入を認めないものを走行異常とした.診断週数,DVまたは臍帯静脈(Umbilical vein; UV)の流入部位,心奇形と心外奇形の有無,心拡大の有無,児の転帰について,診療録より後方視的に調査した.
【結果】
対象は11例で,DV欠損が4例,DV走行異常が7例であった.単胎が9例,双胎の一児が2例であり,診断週数,在胎週数の中央値はそれぞれ29週3日(18週3日から37週2日),36週4日(21週0日から40週5日)であった.DV欠損4例は全て単胎で,22q11.2欠失症候群,18トリソミー,左横隔膜ヘルニアがそれぞれ1例であり,他の1例は重篤な構造異常を認めなかった.UVの流入部位は右房が2例,左房が1例,左内腸骨静脈が1例であった.出生前に心拡大,IVC拡張,三尖弁逆流をそれぞれ3例,2例,3例で認めた.胎児水腫となった左横隔膜ヘルニアの症例は胎児死亡となった.生後に心奇形が確認されたものは22q11.2欠失症候群の1例であり,心奇形は総動脈幹症であった.生存退院は1例のみであった.DV走行異常7例中,21トリソミー,多脾症,VACTER連合が1例ずつあった.DVは4例で右房から遠位のIVCへ,3例は右房へ流入していた.出生後に心奇形が確認されたものは4例であった.出生前に心拡大,IVC拡張,三尖弁逆流をそれぞれ1例,2例,1例で認めた.内蔵錯位が疑われた1例がその後胎児水腫となり胎児死亡に至った.他の6例は生存退院であった.
【結論】
胎児期にDVの異常が疑われた11例の臨床的特徴を示した.9例で染色体異常や心奇形を含む重篤な構造異常を認め,4例では死亡に至った.DVの走行を観察することは周産期管理において一定の意義があると考えられた.