太田 志代, 笹原 淳, 武藤 はる香, 馬淵 亜希, 米谷 直人, 川口 晴菜, 山本 亮, 石井 桂介, 光田 信明

Shiyo OTA, Jun SASAHARA, Haruka MUTOU, Aki MABUCHI, Naoto YONETANI, Haruna KAWAGUCHI, Ryo YAMAMOTO, Keisuke ISHI, Nobuaki MITSUDA

大阪府立母子保健総合医療センター産婦人科

Obstetrics, Osaka Medical Center and Research Institute for Maternal and Child Health

キーワード :

【緒言】
胎児胸水は肺低形成や出生後の呼吸障害となり得る．胎児胸水例に対し，診断・治療目的に胎児胸腔穿刺（TC）が選択される場合がある．胎児胸水は超音波断層法により胸腔内の低輝度エコー領域として診断されるが，肋骨に囲まれた胸腔内を評価するため，三次元超音波を用いても胸水の容量計測は困難である場合が多い．
当院では胎児胸水の半定量的評価として，心四腔断面における低輝度エコー領域に入りうる最大円の直径（胸水ポケット:TP）を用いている．
今回我々は，二次元超音波計測値であるTPが，TCで得られた実胸水量と相関するか検討した．
【対象と方法】
2011年3月から2014年4月に当院で管理され，TCが施行された胎児胸水例を対象とした．TPを胎児の体格で補正するために，児頭大横径（BPD）でTPを除したcorrected TP（cTP）を算出した．
TC直前のcTPと，TCによって得られた実胸水量の相関をピアソンの積率相関で解析した．
【結果】
対象は23例で，胸水貯留の診断週数は27週（17-32週）であった．TC施行週数は29週（18-34週），両側胸水貯留例は12症例に認めた．右片側胸水貯留例は5例，右側胸水貯留例は6例であった．cTPは0.21（0.12-0.41），除去胸水は43ml（10-109ml）であった．
cTPとTCで除去した胸水量の間には正の相関を認めた（相関係数＝0.58）．貯留胸水量＝211.54（cTP）+ 3.4732の近似式を得た（決定係数＝0.3）．
【結論】
胎児胸水症例におけるcTPは実胸水量と相関関係が認められた．cTPは簡便に計測できる指標あり，胸水貯留量の定量的予測を行う上で，有用である可能性がある．cTPを用いる事で，TC後の胸水再貯留などが，より客観的に評価可能となり，臨床上も有用である可能性がある．