Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児異常① 

(S637)

右横隔膜ヘルニアと臍帯ヘルニアを合併した2症例の胎児期画像所見と周産期経過

Prenatal imaging and perinatal course of two fetuses with the rare combination of right congenital diaphragmatic hernia and giant omphalocele

日高 庸博1, 野中 彩沙2, 中原 一成2, 城戸 咲2, 村田 将春1, 藤田 恭之1, 福嶋 恒太郎1, 加藤 聖子2

Nobuhiro HIDAKA1, Ayasa NONAKA2, Kazushige NAKAHARA2, Saki KIDO2, Masaharu MURATA1, Yasuyuki FUJITA1, Kotaro FUKUSHIMA1, Kiyoko KATO2

1九州大学病院総合周産期母子医療センター母性胎児部門, 2九州大学病院産科婦人科

1Comprehensive Maternity and Perinatal Care Center, Kyushu University Hospital, 2Department of Obstetrics and Gynecology, Kyushu University Hospital

キーワード :

【背景】
先天性横隔膜ヘルニアに他の形態異常が合併することは珍しくないが,中では心疾患が最も多く,臍帯ヘルニアの合併は稀である.また,Non-syndromalな右横隔膜ヘルニアと臍帯ヘルニアの合併は報告が極めて少ない.横隔膜ヘルニアの胎児期重症度指標の1つに胸腔内への肝臓脱出があるが,臍帯ヘルニア嚢内に肝臓が脱出していれば,胸腔内での肺圧迫は軽度なものになるとも想像される.
【症例1】
32歳初産婦.妊娠17週時に胎児の臍帯ヘルニアを指摘され当院に紹介された.臍帯ヘルニア嚢内に肝臓の脱出を認めた.羊水染色体検査で正常核型であった.フォローアップ中にそれ以外の異常を指摘できていなかったが,妊娠34週の胎児超音波で,胎児心臓は左側に圧排され,右胸腔内に腸管像を認め,右肺は確認できなかった.小腸を脱出臓器とする右横隔膜ヘルニアと診断した.胎児胸囲は19.9 cmと当該週の2.5パーセンタイル以下で,LTR(肺胸郭断面積比)は0.05,LHR(肺断面積児頭周囲長比)0.89であった.妊娠37週4日に選択的帝王切開術を行い,2830gの男児を娩出した.Apgarスコアは2/1点で,臍帯動脈血pHは7.307であった.出生後直ちに気管内挿管の上でNO吸入療法を開始したが呼吸循環不全が高度で,徐脈のまま心臓マッサージや各種蘇生薬への反応もみられないまま,出生後2.5時間で死亡した.剖検の同意は得られなかったが,胸骨下端は触知されCantrell症候群の徴候はなかった.
【症例2】
32歳初産婦.妊娠24週で胎児臍帯ヘルニアを指摘され,妊娠28週に前医を紹介され入院管理が行われていた.羊水過多を伴い切迫早産の診断に対して塩酸リトドリンと硫酸マグネシウムの持続静注が開始された.羊水染色体検査では正常核型であった.妊娠29週時に撮影されたMRIで横隔膜ヘルニアが判明し,当院搬送となった.搬送時の超音波で羊水過多があり,胎児右胸腔内に腸管像を認め,右横隔膜ヘルニアの所見であった.LTR 0.07,LHR 1.10であった.ヘルニア門6cmの臍帯ヘルニアを認め,肝臓全体と腸管・胃の一部の脱出をみた.子宮収縮抑制剤と羊水除去による管理を継続した.妊娠32週の胎児超音波検査ではLTR 0.05,LHR 0.74と低値であった.胸囲は22.0cmであった.妊娠35週0日に自然破水し,妊娠35週1日に経腟分娩に至った.児は出生体重2313gの男児でApgarスコアは1/1点,臍帯動脈血pHは7.270であった.直ちに気管内挿管し蘇生処置を行ったが,呼吸障害が高度で,アシドーシスの進行を認め,4時間で死亡した.剖検で,胎児期診断以外の合併形態異常はなく,全小腸と結腸の一部が胸腔内に脱出しており,肺重量体重比は0.00208と低値であった.
【結論】
我々の経験した2症例において,肝臓は臍帯ヘルニア嚢内に脱出し胸腔内になかったにも関わらず,LTRやLHRは低値であり,しかもそれらの値以上に生後の呼吸障害が重篤で,早期新生児死亡に至った.臍部型臍帯ヘルニアでは側方皺襞の形成異常から腹腔内容量が小さくなりやすく,脱出腸管のボリュームが増しやすい可能性がある.また,肝臓脱出を伴った臍帯ヘルニア自体が胸郭や肺の低形成をもたらしうることが知られており,横隔膜ヘルニアと臍帯ヘルニアの合併例においては孤発性横隔膜ヘルニアに関する既知の予後予測マーカーによる評価が必ずしも応用できないことを認識した.