Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児異常① 

(S635)

胎児滑脳症の一例

A Case of Fetal Lissencephaly

村田 将春, 嘉村 駿佑, 城戸 咲, 藤原 ありさ, 日高 庸博, 藤田 恭之, 福嶋 恒太郎, 加藤 聖子

Masaharu MURATA, Shunsuke KAMURA, Saki KIDO, Arisa FUJIWARA, Nobuhiro HIDAKA, Yasuyuki FUJITA, Kotaro FUKUSHIMA, Kiyoko KATO

九州大学産科婦人科

Department of Gynecology and Obstetrics, Kyushu University Graduate School of Medical Sciences

キーワード :

【緒言】
滑脳症は脳回および脳溝の低形成を主たる特徴とする先天異常であり,いくつかの責任遺伝子や染色体異常部位が特定されている.多くの場合は小児期にけいれんや発達異常などの高度な神経学的異常を伴う.今回胎児脳室拡大と羊水過多を契機に滑脳症の診断に至った一例を経験したので,経過を報告する.
【症例】
35歳の初産婦で,自然妊娠である.妊娠26週に羊水過多を指摘されて当院に紹介となった.胎児発育は週数相当であったが,羊水ポケット10cmで羊水過多であり,側脳室後角は11mmで軽度拡大していた.BPD(児頭大横径)およびHC(頭囲長)は正常範囲であり小脳の形態に異常を認めなかった.75gOGTTを行ったが母体の耐糖能異常は認めなかった.小顎症や消化管閉鎖などの所見を認めず,その他の形態異常を指摘できなかった.胎児側脳室の軽度拡大に対する精査目的で妊娠30週6日に胎児MRI検査を行い,脳梁の低形成と脳回および脳溝の低形成を指摘された.脳回および脳溝は形成途中である可能性を否定できないため妊娠36週に再度MRI検査を行う方針とした.羊水染色体検査については同意を得られず施行しなかった.妊娠32週3日に羊水ポケット15cmであり羊水過多に伴う呼吸苦症状を呈するようになっていたため,4,750ccの羊水除去を行って羊水ポケット8cmとなった.妊娠36週3日に胎児MRI検査を行い,改めて脳梁の低形成と脳回および脳溝の低形成を指摘された.以上の所見より羊水過多症および胎児滑脳症疑いと診断し,患者夫婦に病状と方針の説明を行った.その後徐々に羊水過多症状が再燃したため,週数を考慮して,児頭の固定を得ることと臍帯脱出のリスクを低減する目的で羊水除去術を先行することとした.妊娠37週2日に4,540ccの羊水除去を行って羊水ポケットは14cmから4.5cmとなった.その後頸管拡張とオキシトシンの点滴投与を行って陣痛誘発を行い妊娠37週5日に経腟分娩に至った.児は2200gの女児でApgarスコアは1分値8点5分値9点であった.軟口蓋裂と下顎の後退を認めたほかは外表奇形を認めず,自発呼吸と自律哺乳は確立した.今後は発達の経過を観察しながら遺伝学的検査を含めた精査行うことを予定している.
【結語】
胎児脳室拡大と羊水過多を契機に滑脳症の診断に至った一例を経験した.胎児期には最終診断に必要な遺伝学的検査を行わなかったが,超音波所見やMRI所見に基づいて患者への病状説明や方針の立案および必要な介入を行い,適切な周産期管理を行い得たと考えられた.