Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児心臓② 

(S632)

当院における胎児心臓腫瘍の3例

3 cases of fetal heart tumor in our hospital

衛藤 英理子, 渋川 昇平, 光井 崇, 平野 友美加, 髙原 悦子, 早田 桂, 瀬川 友功, 増山 寿, 平松 祐司

Eriko ETO, Syohei SHIBUKAWA, Takashi MITSUI, Yumika HIRANO, Etsuko TAKAHARA, Kei HAYATA, Tomonori SEGAWA, Hisashi MASUYAMA, Yuji HIRAMATSU

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科産科・婦人科学教室

Obstetrics & Gynecology, Okayama University Graduate School of Medicine, Dentistry and Pharmaceutical Sciences

キーワード :

【はじめに】
胎児心臓腫瘍はきわめて稀な疾患である.組織学的にはほとんどが横紋筋腫であり,結節性硬化症を合併することもある.当院で2009年1月から2014年12月までに周産期管理を行った胎児心臓腫瘍の3例につき報告する.
【症例報告】
「症例1」30歳,3経妊3経産.結節性硬化症の家族歴なし.自然妊娠成立し,初期より助産院で妊娠管理されていた.妊娠36週0日に本人希望で前医を受診したところ胎児心臓腫瘍を指摘され,妊娠38週0日に当院へ紹介となった.胎児超音波検査では心室中隔から左心室内に径13mm大の高輝度腫瘤を認め,一部が左室流出路に突出していた.脳内石灰化像など,心臓以外に異常所見は無かった.心臓血管外科と相談の上,計画分娩により妊娠39週1日3966gの男児を経腟分娩された.出生後の循環動態は安定していたが,腫瘍塞栓のリスク回避目的に日齢1に腫瘍切除術を行い,組織診断は横紋筋腫であった.術後経過は順調であるが,生後2か月半の頭部MRIで結節性硬化症と診断され,5歳となった現在は近医通院中である.「症例2」30歳,2経妊2経産.結節性硬化症の家族歴なし.自然妊娠成立し,初期より近医で妊娠管理されていた.妊娠27週6日の健診時に胎児心臓腫瘍を指摘されて前医へ紹介となり,妊娠29週5日に周産期管理目的に当院へ紹介となった.胎児超音波検査では左心室内,右心室内,右心房内にそれぞれ径14mm,17mm,5mm大の高輝度腫瘤を認めた.房室弁逆流や流出路の血流異常のような明らかな循環阻害は無かった.妊娠39週5日2866gの女児を経腟分娩された.児は生後も循環動態に異常なく経過したが,日齢3の頭部CTで結節性硬化症と診断された.3歳となった現在は近医通院中である.「症例3」36歳,0経妊0経産.不妊治療で妊娠成立し,前医で妊娠管理されていた.妊娠18週の健診時に胎児心臓腫瘍を指摘され,妊娠19週5日当院へ紹介となった.胎児超音波検査では左心室内に径10mm大の高輝度腫瘤を認めた.妊娠週数を経るにつれて次第に腫瘤は大きくなり,妊娠36週6日には径20mm大となったが,明らかな循環阻害は無かった.切迫早産で入院加療の後,妊娠37週4日に3006gの女児を経腟分娩した.出生後の超音波検査やCT検査からは粘液腫が疑われているが,日齢13に心室頻拍を認め抗不整脈薬で治療を開始した.以後も数回繰り返しているため,生後2か月の現在も入院加療中である.
【考察】
きわめて稀な胎児心臓腫瘍の3例を経験した.胎内管理のポイントは腫瘍の増大や不整脈の有無,心不全徴候がないかをチェックすることであり,問題が無ければ分娩は産科的適応に準じてよいとされる.出生後は縮小するものが多いが,心不全や流出路障害となる場合は外科的切除も考慮される.その後の経過と,文献的考察を含めて報告する予定である.