Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児心臓① 

(S631)

胎児超音波検査により診断し得た胎児動脈管早期収縮の一例

Premature constriction of fetal ductus arteriosus:a case report

札場 恵, 田中 和東, 松木 貴子, 辻本 麻美, 松木 厚, 和田 夏子, 西本 幸代, 中村 博昭, 中本 收

Megumi FUDABA, Kazuharu TANAKA, Takako MATSUKI, Asami TSUJIMOTO, Atsushi MATSUKI, Natsuko WADA, Sachiyo NISHIMOTO, Hiroaki NAKAMURA, Osamu NAKAMOTO

大阪市立総合医療センター産科

Department of Obstetrics, Osaka City General Hospital

キーワード :

【緒言】
胎児動脈管早期収縮は胎児水腫,子宮内胎児死亡,新生児遷延性肺高血圧などの原因となることがあり,妊娠中期以降の妊婦への非ステロイド系抗炎症剤(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)投与により誘発されることが知られている.今回我々は,NSAIDs内服歴のない妊婦において胎児超音波検査により診断し得た胎児動脈管早期収縮の一例を経験したので報告する.
【症例】
20歳代,女性,0経妊0経産.妊娠期間中,胃腸炎に対しH2-blockerを内服していた.子宮筋腫合併妊娠にて前医で妊娠管理されていた.明らかな異常奇形は指摘されていなかった.妊娠30週頃より児頭大横径(BPD)の発育が緩徐となり,妊娠初期-1.7SDから妊娠30週時-2.8SDとBPDの発育不全が疑われ,胎児管理目的に妊娠34週3日,当院初診となった.初診時の胎児超音波検査でBPDは7.99cm(-1.0SD)であったが,児頭周囲長(HC)は34.57 cm(+1.3SD)で,児推定体重(EFBW)2220g(+0.3SD)と児発育は良好であった.その際,形態学的に動脈管の狭小化を認めたため計測したところ,動脈管径2.9mm(-2SD)で,動脈管の最大血流速度186cm/sと増大を認め,胎児動脈管早期収縮が疑われた.右房右室の拡大や肺動脈弁狭窄,三尖弁逆流は認められなかった.妊娠35週での小児循環器科の胎児心臓超音波検査でも,動脈管の最大血流速度200cm/sと増大を認め,ごく軽度の動脈管早期収縮と診断された.その後心拡大等,明らかな心不全兆候は認められず,待機的管理を行った.妊娠40週1日に自然陣痛発来し,同日自然頭位分娩に至った.児は3394g,Apgar Score 1分値8点,5分値9点であった.出生後,小児循環器科による超音波検査で著明な右室肥大所見は認められず,ごく軽度の動脈管早期収縮と診断され,経過観察の方針となった.
【考察】
胎児動脈管早期収縮のメカニズムはいまだ明確にされておらず,NSAIDs内服歴のない胎児動脈管早期収縮の例も報告されている.妊娠後期に生じた軽度の動脈管収縮は出生後の経過が比較的良好なため見逃されていることも多いが,薬剤誘発性でない胎児動脈管早期収縮は薬剤誘発性のものに比べて予後が悪く進行性であるとの報告もある.今症例のようにNSAIDs内服歴のない胎児動脈管早期収縮の診断に超音波検査は有用であると考えられる.