Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 産婦人科
胎児心臓① 

(S630)

無脾症候群に合併した総肺静脈還流異常症の2例

Two cases of Asplenia syndrome with total anomalous pulmonary venous connection typeⅢ

太崎 友紀子, 北代 祐三, 住江 正大

Yukiko TAZAKI, Yuzo KITADAI, Masahiro SUMIE

福岡市立こども病院産婦人科

Obstetrics and Gynecology, Fukuoka Children’s Hospital

キーワード :

総肺静脈還流異常(total anomalous pulmonary venous connection:以下TAPVC)は解剖学的左心房に還流すべきすべての肺静脈が左心房以外の体静脈系に異常に還流する先天性心疾患である.今回我々は無脾症候群に合併した総肺静脈還流異常症Ⅲ型を2例経験したので報告する.
【症例1】
28歳,未経妊.妊娠26週に胎児心形態異常を指摘され,精査目的で紹介となった.胎児超音波断層法で胃胞は左側にあり,心臓の軸は右側,心房および心室は1つであった.肺動脈は動脈管を介し,大動脈から血流を受けていた.肺静脈は心房の左後方で共通肺静脈を形成し,後方へ蛇行して下行し臍静脈から静脈管が分枝している部位に合流していた.以上から内臓錯位,単心房単心室,肺動脈閉鎖,TAPVCⅢ型と出生前診断した.垂直静脈の拡張が著明で体循環合流部位の狭窄所見も認められたため,肺静脈の還流障害を疑い循環器科および心臓外科待機の下に妊娠38週2日に帝王切開分娩を施行した.児は2470g,Apgar score 8点(1分値)/8点(5分値)で出生し,緊急処置は要さなかった.5生日に肺静脈還流異常再建術を行われ,以後順調に経過した.
【症例2】
37歳,3経妊3経産.妊娠26週に胎児心形態異常を指摘され,妊娠28週に近医周産期センターを受診した.精査・加療目的で妊娠32週に紹介となった.胎児超音波断層法で胃胞は左側にあり,心臓の軸は右側,心房および心室は1つであった.大血管の位置関係は転位していた.肺静脈は心房の左後方で共通肺静脈を形成し,右後方の心房へ流入していると判断した(画像1).以上から内臓錯位,単心房単心室,肺動脈狭窄と出生前診断した.骨盤位の適応で妊娠38週4日に帝王切開術を施行した.児は2445gの女児でApgar score 7点/8点であった.出生後のSpO2が不良であり,肺静脈狭窄が疑われ0生日に造影CTを施行された.4本の肺静脈は心房の右後方で共通肺静脈を形成後,下行大動脈前方を下降して門脈に合流していた.以上からTAPVCⅢ型と出生後診断された.1生日に肺静脈還流異常再建術を行われ,現在加療中である.
症例1はTAPVCⅢ型と出生前診断できたが,症例2はできていなかった.TAPVCの出生前診断は一般的には難しいと言われているが,Ⅲ型は他の型と比較すると狭窄を起こしやすくチアノーゼが顕著になりやすいことからも可能な限り出生前診断が望ましい.肺静脈の心房内への血流のみではなく,垂直静脈の有無を確認することの重要性を再認識させられた.