Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
その他(超音波機器) 

(S625)

腹部領域における,ケーブルレスプローブ搭載超音波診断装置の使用経験

Use experience of an ultrasound system with wireless transducers in abdominal region

玉野 正也, 植竹 知津, 中元 明裕, 須田 季晋

Masaya TAMANO, Chizu UETAKE, Akihiro NAKAMOTO, Toshikuni SUDA

獨協医科大学越谷病院消化器内科

Gastroenterology, Dokkyo Medical University Koshigaya Hospital

キーワード :

【目的】
超音波診断装置の進歩は著しい.我々は第87回の本学会で,手のひらサイズの超音波診断装置(V scan)の有用性について報告した.今回は世界初のケーブルレスプローブ搭載超音波診断装置(ACUSON Freestyle:以下Freestyle)を使用する機会を得たので,その有用性と問題点を検討した.
【対象と方法】
臨床的に診断が確定し,汎用腹部超音波診断装置にてその所見が良好に描出された45例を対象とした.対象の内訳は,脂肪肝12例,肝嚢胞8例,肝血管腫5例,肝細胞癌4例,胆嚢ポリープ8例,胆嚢結石5例,腹水3例であった.なお,肝嚢胞,肝血管腫,肝細胞癌は1cm以上,胆嚢ポリープ,胆嚢結石は5mm以上の病変のみを対象とした.汎用型超音波診断装置はGE社製LOGIQ E9を用い,通常の観察に引き続きFreestyleを用いて同所見を観察した.また,超音波指導医1名を含む,検査経験年数5年以上の医師4名で走査時の使用感について検討を行った.
【結果】
脂肪肝は12/12例(100%),肝嚢胞は6/8例(75.0%),肝血管腫は2/5例(40.0%),肝細胞癌は3/4(75.0%),胆嚢ポリープは6/8(75.0%),胆嚢結石は5/5(100%),腹水は3/3(100%)でFreestyleによる病変の描出が可能であった.しかし,肝細胞癌,胆嚢ポリープの内部エコーの観察は充分とは言えなかった.病変が描出できなかった肝嚢胞,肝細胞癌,および胆嚢ポリープは深部に存在するものであった.また,肝血管腫は充分に浅い位置に存在しても描出不能のものを認めた.通常の診断装置に慣れている検者にとっては,ケーブルレスプローブは重く不安定であり,プローブに配置されたフリーズボタン類,および本体に配置された各種ボタンの操作性も快適ではなかった.
【考察】
各病変の描出能は血管腫を除き75%以上と良好であったが,深部病変および肝腫瘍や胆嚢ポリープの内部エコーの不明瞭さからも画質の改善が必要と考えた.また,通常,我々がプローブ走査をする際には,無意識のうちにケーブルとプローブの間で重量のバランスをとっている.手背にケーブルをのせて安定化させている場合もある.このためプローブがケーブルレスになると,その保持が不安定になるものと思われた.また,今回のケーブルレスプローブは一般的なプローブよりも重量があり縦長であり,特にプローブを傾けた際の走査時にはストレスを感じる場合もみられた.プローブ上に配置されたボタン類の走査も含めて充分な慣れが必要と思われた.今回は超音波検査室での限られた症例数のみの経験であるが,外来や病棟のベッドサイドでは,ケーブルレスの有用性が実感できるのではないかと推測した.
【結論】
ケーブルレスプローブの使用経験を報告した.画質や操作性に改善が望まれるものの,超音波診断装置の発展上,大きな転機であると思われる.