Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
その他(超音波機器) 

(S624)

補間機能による超音波画像の変化について

Ambiguity of ultrasound image related with“interpolation”system

大山 葉子1, 石田 秀明2, 長沼 裕子3, 星野 孝男4, 三浦 百子1, 高橋 律子1, 草皆 千春1, 渡部 多佳子2, 長井 裕5

Yoko OHYAMA1, Hideaki ISHIDA2, Hiroko NAGANUMA3, Takao HOSHINO4, Momoko MIURA1, Ritsuko TAKAHASHI1, Chiharu KUSAKAI1, Takako WATANABE2, Hiroshi NAGAI5

1秋田厚生医療センター臨床検査科, 2秋田赤十字病院超音波センター, 3市立横手病院消化器科, 4秋田厚生医療センター消化器内科, 5NGI研究所

1Department of Medical Laboratory, Akita Kohsei Medical Center, 2Department of Center of Ultrasound Diagnosis, Akita Red Cross Hospital, 3Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 4Department of Gastroenterology, Akita Kohsei Medical Center, 5New Generation Imaging Laboratory

キーワード :

【はじめに】
補間機能は超音波画像を自然に見せるための処理で従来から必要最小限利用されてきた.しかし近年この処理法を発展させた機能を搭載した装置が増加してきた.今回,我々は,下記の方法でこの“改良型補間機能(使用名称は下記に記載)”が超音波画像に与える影響を検討し若干の知見を得たので報告する.
【診断装置】
GE Healthcare社製:LogiqE9(SRI).東芝社製:AplioXG(Presision).
【対象と方法】
横隔膜エコーが断裂して表示されるアーチファクト像の代表的なモデルとして以前から知られている右肋間における,1)肝のう胞後方の横隔膜エコーの断裂像7例,2)多量の腹水による横隔膜エコーの断裂像5例に関し,改良型補間機能をかけない状態で横隔膜エコーの断裂像を確認し,次いで改良型補間機能を順次強くさせながら横隔膜エコーの断裂の状態を観察した.
【結果】
1)肝のう胞後方の横隔膜エコー:5/7(71%)で断裂が不鮮明となり,その2/5(40%)で断裂がみられなくなった.この断裂の不鮮明化は補間の程度をますにつれてすすんでいった.2)腹水例の横隔膜エコー:4/5(80%)で断裂が不鮮明となり,その2/4(50%)で断裂がみられなくなった.この不鮮明化は1)同様,補間の程度を強めるにつれてすすんでいった.
【まとめと考察】
現在の超音波診断装置は,a)超音波伝播速度は生体内で一定(1530−1540m/秒)で,b)伝播により生ずる減衰も均等で,さらに,c)生体内で超音波は常に直進し,d)放射された超音波(ビーム)は一本でそれは限りなく細い,という仮定から画像を作成し,これらの作業の集合体が普段目にするBモード像である.しかし,得られた情報をそのまま画像にすると(特に深部では)隙間の空いたものになってしまう.その隙間を計算値でうめる処理が補間(interpolation)で,その計算値は機種やメーカーにより若干異なる.この補間処理を拡大したものが今回対象とした機能で,本来の画像では不連続に表示される箇所に対し人為的に連続性を持たせるもので(消化管の層構造の表示など)臨床的にも用いられている.実際の現場で起きる問題点は,この機能の意味を理解せず目先の画像の見た目のみで検査を行いえられた画像のみから細部を評価する施設が少なくないことである.今回取り上げた横隔膜の断裂は腹水や肝のう胞後方で生じるアーチファクトとして広く知られている.これは水-肝実質間の音速差による超音波の屈折に基因するもので,横隔膜断裂箇所の近傍がめくりこむ現象も伴う.今回の検討では,上記の1)2)の検討は本質的には同じ内容であるが,横隔膜エコーの微妙な凹凸や断裂が発展型補間機能でぼやけるという結果が得られた.このことは,人為的な補間機能を強くかけすぎると本来の超音波像が(見かけは一見綺麗になっても)実は不正確になることを示している.超音波診断に当たってはここの機能を十分理解した上で画像を作成する必要があると思われる.
【文献】
長井裕:絵でみる超音波.南江堂