Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
その他(超音波機器) 

(S623)

超音波ファントムECHOZYとVolume Navigation Systemを用いた腹部超音波検査研修

Training of abdominal ultrasonography used ultrasound examination training model and the Volume Navigation System

玉野 正也, 植竹 知津, 中元 明裕, 須田 季晋

Masaya TAMANO, Chizu UETAKE, Akihiro NAKAMOTO, Toshikuni SUDA

獨協医科大学越谷病院消化器内科

Gastroenterology, Dokkyo Medical University Koshigaya Hospital

キーワード :

【背景と目的】
腹部超音波検査は現在の消化器診療において,診断のみならず治療の一助としても欠かすことのできない手技であるが,近年では若手医師の超音波離れが目立つ.そのような背景の中,ECHOZYは汎用超音波診断装置で腹部臓器を正確に撮像することが可能な世界初の超音波ファントムとして開発された.また,Volume Navigation Systemは超音波診断装置,磁場発生装置,磁気センサーの3つの装置から構成され,GPS機能を使用することによって,マーカーを常にトラッキングし超音波画面上に表示することで,関心領域の位置を容易に把握することが可能である.今回は,これらの新技術を駆使して若手医師を的確に教育し,かつ彼らにとって魅力ある超音波検査を目指すために本研究を行った.
【対象と方法】
平成25年度に当科において超音波研修を行った5名のレジデントを対照群とした.彼らは我々が作成した教育用VTRと臨床現場でのハンズ・オンで超音波検査を研修した.彼らが検査に要した時間を,研修開始後4,8,12か月(以下,前期,中期,後期)の時点で超音波レポーティングシステムから算出した.平成26年度から研修を開始したレジデント4名を本研修群とし,彼らには対照群と同様の研修に加えて超音波ファントムとVolume Navigation Systemを用いた超音波研修を定期的に行い,検査所要時間を同様に算出して比較検討した.なお,今回の検討では検査結果が正常範囲内であった症例のみの検査所用時間を検討した.当然ながら検査所要時間のみならず画像の精度も重要であるが,この点については当学会認定超音波指導医が厳しく評価した.
【結果】
対照群が1年間で担当した検査は1241件,うち正常範囲内と診断されたのは83例であり,これらの平均検査所用時間は前期が392±81秒,中期が359±130秒,後期が391±214秒であり,研修時期と検査所用時間との間には統計学的な差は認めなかった.本研修群が,抄録作成時点の8カ月で担当した検査は756件,うち正常範囲内は62例.平均検査所用時間は,前期が545±125秒,中期が316±172秒であり,前期に比して中期の検査所用時間は有意に短くなっていた(p<0.0001).また,対照群と本研修群の前期,中期の検査所用時間を比較すると,前期では本研修群の方が有意に長く(p<0.0001),中期では有意差は認めなかったものの,本研修群で短い傾向を認めた(p=0.4922).
【考察】
超音波ファントムとVolume Navigation Systemを用いた超音波研修は指導医の技術をゲーム感覚で学ぶことが可能であり,若手医師からも好評であったと思われる.本研修を行った群は,研修開始後4カ月の検査所用時間が対照群に比して有意に長かった.これは,本研修群の医師が自らの納得のゆく画像を得ようと意欲的に実際の検査に臨んだためと推測された.また,研修を繰り返すことによって検査所用時間は有意に短縮した.研修開始後8カ月の時点での本研修群の検査所用時間はおよそ6分であり,これ以上に短時間化する必要性はないと思われるが,12カ月後まで観察して報告したい.
【結論】
超音波ファントムとVolume Navigation Systemを用いた研修は,若手医師の腹部超音波に対する興味と積極性を高め,いわゆる超音波離れを改善させる可能性がある.