濱本 耕平¹, 千葉 英美子¹, 田中 修¹, 小野口 晃², 小杉 知宏², 尾本 きよか³

Kohei HAMAMOTO¹, Emiko CHIBA¹, Osamu TANAKA¹, Akira ONOGUCHI², Tomohiro KOSUGI², Kiyoka OMOTO³

¹自治医科大学附属さいたま医療センター放射線科, ²自治医科大学附属さいたま医療センター臨床検査部, ³自治医科大学附属さいたま医療センター総合医学1（臨床検査部）

¹Department of Radiology, Saitama Medical Center, Jichi Medical University, ²Clinical Laboratory Medicine, Saitama Medical Center, Jichi Medical University, ³Department of Laboratory Medicine, Diagnostic Ultrasound Division, Saitama Medical Center, Jichi Medical University

キーワード :

【背景・目的】
膵十二指腸領域の後腹膜血腫は比較的稀な病態であり，画像所見に関する報告は少ない．今回，超音波検査（US）が診断に有用であった膵十二指腸部後腹膜血腫の3例を経験したので，文献的考察を加え報告する．
【症例1】
70歳台男性．嘔吐を主訴に受診．造影CTで十二指腸下行脚腹側に79mm大の厚壁嚢胞性腫瘤を認め，壁に不均一な造影効果を認めた．MRIでは，病変内部はT1強調画像で不均一な高信号と低信号との混在を示しており，粘液性嚢胞性腫瘍，出血性嚢胞，被胞化血腫が鑑別に挙がった．USでは，膵頭部・肝右葉・右腎の間に境界明瞭，内部不均一で無エコー部分を有する低エコー腫瘤を認めた．内部に血流なく，後方エコーは増強していた．
【症例2】
60歳台男性．持続する嘔吐を主訴に受診．造影CTでは十二指腸水平脚腹側に77mm大の辺縁やや不整な厚壁嚢胞性腫瘍を認め，MRI所見は症例1と類似していた．USでは，膵頭部尾側に接して嚢胞性腫瘤を認め，内部に血流はなく，debris様エコーが堆積していた．
【症例3】
40歳台，女性．突然発症の腹痛にて救急搬送．CTにて後腹膜血腫の診断となり，保存加療にて改善．発症2カ月後にフォローアップのUSを施行した．USでは，膵頭部近傍に長径43mm×38mmの低エコー腫瘤を認めた．内部は不均一，血流は認めず後方エコーはやや増強していた．
【経過】
いずれの症例も画像所見より被包化後腹膜血腫と診断し，無治療経過観察にて病変の縮小を認めた．症例1および3では，USにて経過観察を行った．
【考察】
後腹膜血腫の診断は，急性期では比較的容易であるが，慢性期では血腫の器質化や被胞化をきたすため膵嚢胞性腫瘍や後腹膜腫瘍との鑑別が困難となる．器質化血腫のUS所見としては，境界明瞭内部不均一な嚢胞性腫瘤で，内部血流の欠損，壁構造内血流の存在（血管新生）などが報告されているが，今回の症例でもこれらの所見を認めたため，血腫を疑うことができた．
【結語】
膵十二指腸部後腹膜血腫の診断にUSは有用である．