Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
膵臓② 

(S617)

ソナゾイド®造影腹部超音波検査を施行した膵腺扁平上皮癌の1例

Adenosquamous carcinoma of the pancreas with contrast-enhanced ultrasonography ; a case report

伊藤 将倫1, 西尾 雄司2, 竹田 欽一2, 荒川 恭宏2, 泉 真理子2, 石川 恵里2, 鈴木 誠治1, 今泉 延1, 木下 智恵美1, 重岡 あゆみ1

Masatsugu ITO1, Yuuji NISHIO2, Kinichi TAKEDA2, Yasuhiro ARAKAWA2, Mariko IZUMI2, Eri ISHIKAWA2, Seiji SUZUKI1, Tadashi IMAIZUMI1, Chiemi KINOSHITA1, Ayumi SHIGEOKA1

1名古屋鉄道健康保険組合名鉄病院放射線科, 2名古屋鉄道健康保険組合名鉄病院消化器内科

1Department of Radiology, Meitetsu Hospital, 2Department of Gastroenterology, Meitetsu Hospital

キーワード :

【はじめに】
膵腺扁平上皮癌は,日本膵臓学会膵癌登録の集計によると,膵癌のうち2.1%が膵腺扁平上皮癌として報告されている.画像的な特徴は,造影CT検査や血管造影検査において,腫瘍辺縁のhypervascularityや腫瘍内部の嚢胞性領域などを形成するとの報告が多くみられる.今回,造影腹部超音波検査を施行した膵腺扁平上皮癌の1例を経験したので報告する.
【症例】
70歳代,男性.
【主訴】
心窩部痛
【現病歴】
心窩部痛を主訴に近医受診.腹部単純CT検査にて膵頭部腫大像を認め,膵頭部腫瘤疑いにて消化器内科紹介受診.
【血液検査所見】
WBC 5250/mm3,CRP 0.3mg/d,T-Bil 3.3mg/dl,AST 216IU/l,ALT 358IU/l,ALP 928IU/l,γGTP 601IU/l,AMY 200IU/l,CEA 14.8ng/ml,CA19-9 21U/ml,SCC 4.8ng/ml,DUPAN-2 130U/ml,Span-1 9.8U/ml
【CT検査・MRI検査画像検査所見】
造影CT検査では,腫瘤辺縁が濃染されるring enhancementの所見が得られた.腫瘤内部は,わずかに線状の濃染像が認められた.MRI検査では,T1強調画像でlow intensity,T2強調画像でhigh intensity,さらに内部には壊死や嚢胞を示すと考えられる strong high intensityを示した.
【超音波検査】
膵頭部に境界不明瞭,辺縁不整な30mm大の低エコー腫瘤像を認めた.腫瘤の内部エコーは,不均一で,カラードプラ像では内部にシグナル像は認めなかった.腫瘤より尾側の主膵管は著明に拡張しており,腫瘤によって途絶しているように観察された.
当院倫理委員会のもと,患者に十分なインフォームドコンセントを行い,ソナゾイド®造影腹部超音波検査(CEUS)を施行した.CEUSでは,腫瘤辺縁より内部に流入する線状のシグナルを認めたが,全く染影されない部分と線状に染影される部分が混在し,腫瘤全体が蜂の巣状様の染影像を呈した.
各種画像診断検査より,低分化型膵管癌,膵腺扁平上皮癌などを疑い,膵頭・十二指腸切除術を施行した.
【病理組織所見】
腫瘤は扁平上皮癌成分と腺癌成分の両方を認めたが,扁平上皮癌への分化が腫瘍の1/3を超え腺扁平上皮癌と診断した.
【考察】
膵腺扁平上皮癌は,扁平上皮癌では増殖速度が速く血管造成が追いつかず,内部壊死に至る傾向が強いとされている.腫瘍内壊死は通常型膵癌ではまれな所見であり,腺扁平上皮癌の特徴の一つと考えられる.自験例でのCEUS画像は,他の画像診断検査より腫瘤内の壊死部分を明瞭に描出し得ることができ,膵癌の組織型診断においてCEUSが一助となる可能性が示唆された.
【結語】
ソナゾイド®造影腹部超音波検査を施行した膵腺扁平上皮癌の1例を報告した.腫瘍の内部構造を詳細に描出することは,より正確な診断につながると思われた.