Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
膵臓① 

(S615)

CTPVを伴った膵癌の2例

Pancreatic cancer with CTPV: report of 2 cases

佐藤 将人1, 鈴木 克典1, 佐藤 純子2, 赤塚 れい子2, 伊藤 千代子2, 門間 美穂2, 長沼 裕子3, 石田 秀明4

Masato SATO1, Katsunori SUZUKI1, Junko SATO2, Reiko AKATSUKA2, Chiyoko ITO2, Miho MOMMA2, Hiroko NAGANUMA3, Hideaki ISHIDA4

1山形県立中央病院消化器内科, 2山形県立中央病院中央検査部, 3市立横手病院消化器内科, 4秋田赤十字病院超音波センター

1Department of Gastroenterology, Yamagata Prefectural Central Hospital, 2Department of Medical Laboratory, Yamagata Prefectural Central Hospital, 3Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 4Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【目的】
膵癌は膵内外を浸潤性に発育し腫瘤を形成する.浸潤する脈管系は周囲動脈と門脈であるが,進行例は生存期間が比較的短いためCTPV(Cavernous transformation of the portal vein)がみられることは比較的まれである.今回我々はCTPVを伴う膵癌2例を経験したので超音波(US)所見を中心に報告する.
診断装置:東芝社製:AplioXG.Aplio500,超音波造影剤:ソナゾイド®(第一三共社)で,造影は通常の肝腫瘍の造影方法に準じた.
【症例1】
30歳代女性.主訴:腹部膨満感.US上膵体部中心に膵全体に浸潤している5cm大の巨大な腫瘍を認めた.肝内に多数の転移巣あり.肝内門脈枝は開存していたが肝外門脈は管腔構造として描出しえず通常門脈本幹〜脾静脈が走行する箇所の周囲に多数の微細血管を認め定常流を示すことから膵癌の広範な門脈浸潤によるCTPVと診断した.AST63 IU/l,ALT31 IU/l,ALP401 IU/l,γ-GPT82 IU/lと軽度の肝障害を伴っており,CEA 9.6ng/mlと上昇を認めた.腫瘍生検にて確定診断した.現在診断から3ヶ月が経過し化学療法中である.
【症例2】
50歳代女性.主訴:数ヶ月来の食欲不振と体重減少.US上膵実質に異常は無いように思われたが脾静脈と門脈が明瞭に描出されなかった.さらに,上腸間膜動脈根部を囲む低エコー領域あり.これらから膵癌の周囲組織への浸潤を考えた.なお,肝門部には発達したCTPVが認められた.生化学データはほぼ正常であったがCA19-9が軽度上昇していた.CT,PET,なども合わせても確診にいたらず診断目的に回復術施行.腫瘍生検で膵癌と診断し膵体尾部切除.次第に病状悪化し1年後に死亡.
【まとめと考察】
CTPVは門脈の閉塞が原因で二次的に閉塞箇所周囲に発達した求肝性の微細血管の集合体でカラードプラとFFT波形でほぼ確診可能である.CTPVの原疾患は多種であるが多くは血栓による閉塞で悪性腫瘍に起因するものは低率である.中でも膵癌によるものは報告が散見される程度で,進行膵癌症例は生存期間が比較的短いためCTPVが発達することが無いと考えられる.ただ,今後抗がん剤の改良で長期生存例が増加する場合CTPVを伴う症例が増加すると予想される.門脈が閉塞すると指標が不明瞭となることもあり超音波診断上,膵癌-CTPVという組み合わせにも慣れておく必要があると思われた.なお,今回の2例はともに女性でかつ比較若くこれらの因子と膵癌の浸潤形態という視点も意味があると思われた.