Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
膵臓① 

(S614)

膵粘液癌7切除例の検討

Ultrasonographic findings Mucinous Carcinoma of the pancreas

千葉 有希乃1, 宮越 基1, 中島 幸恵1, 小林 幸子1, 伊藤 智栄1, 橋本 碧1, 長崎 久美子1, 蓮尾 茂幸1, 中島 哲1, 水口 安則2

Akino CHIBA1, Motoi MIYAKOSHI1, Yukie NAKAJIMA1, Sachiko KOBAYASHI1, Tomoe ITOU1, Midori HASHIMOTO1, Kumiko NAGASAKI1, Shigeyuki HASUO1, Satoshi NAKAJIMA1, Yasunori MIZUGUCHI2

1独立行政法人国立がん研究センター中央病院臨床検査部, 2独立行政法人国立がん研究センター中央病院放射線診断科

1Clinical Laboratory, National Cancer Center Hospital, 2Diagnostic Radiology, National Cancer Center Hospital

キーワード :

【はじめに】
膵粘液癌は膵癌取り扱い規約第6版にて浸潤性膵管癌の一亜型に分類され,粘液産生と粘液結節が著しい癌で,個々の粘液結節および癌全体の周りの線維化が特徴とされている.「膵癌登録報告2007」によれば,浸潤性膵管癌の1.4%とまれな組織型である.そのため超音波の文献報告も少なく,画像診断的特徴など一定の見解がない.今回我々は,病理組織学的に確定診断された膵粘液癌の7切除例,7病変を経験したのでその超音波所見を報告する.
【対象と方法】
2004年3月から2014年9月の間に当院検査室において超音波を施行後切除され,膵粘液癌と診断された7病変を対象とした.年齢は,50歳代から80歳代(平均62歳),男女比は,5:2であった.超音波診断装置は,東芝メディカルシステムズ社製Aplioシリーズを使用し,Bモード:部位,大きさ,形態,内部エコー,主膵管との関係など,およびカラードプラ所見:腫瘍内血流信号の有無について検討した.
【結果】
(超音波所見)腫瘍の存在部位は膵頭部1,膵体部1,膵体尾部3,膵尾部2病変であった.腫瘍の大きさは,15mmから100mm大(平均59mm大),形状は不整形6,分葉形1病変.全病変境界明瞭,輪郭不整,低エコーを示した.6病変では腫瘍内に嚢胞状成分を認めた.嚢胞状成分は,5mm大未満でわずかに認めたものが2病変,5mm大前後が疎に分布していたものが3病変,50mm大で偏在していたものが1病変であった.また,1病変では腫瘍内に多数の高エコー斑を認めた.主膵管については,膵頭部の1病変のみ尾側主膵管拡張を認めた(5mm径).1病変は膵体部に存在するも主膵管と接しておらず主膵管拡張を認めなかった.5病変は腫瘍が膵尾部端まで存在していた.全病変カラードプラにて腫瘍内部に血流信号を検出しなかった.
(病理組織所見)切除術式は,膵頭十二指腸切除術1,膵体尾部切除6症例であった.いずれも肉眼にて腫瘍内に小嚢胞構造を認め,組織学的には,異型核と好酸性胞体を有する異型細胞が豊富な粘液産生により粘液湖を形成し内部に浮遊して増殖する腫瘍像を認めた.2病変は膵管内乳頭粘液性腫瘍由来の粘液癌と診断された.
【考察とまとめ】
膵粘液癌の7症例,7病変の超音波像について検討した.粘液癌の多くは膵体尾部に存在した.腫瘍の多くは不整形,輪郭不整(特に棘状突起様構造物),低エコーを示し,カラードプラにて腫瘍内部に明らかな血流信号を示さなかった.これらは,通常型の浸潤性膵管癌に認める所見であった.しかしながら,内部に複数の嚢胞状成分や高エコー斑を含む病変は,漿液性嚢胞性腫瘍などの腫瘍内部に嚢胞状成分を含む腫瘍と鑑別診断が問題となり,診断に迷うことがあった.注意深く観察すると嚢胞状成分の大きさは1病変を除き,大きくても5mm大前後であり,比較的大きな嚢胞状成分あるいは大小さまざまな嚢胞状成分を含まず,密度も疎である点が他の嚢胞状腫瘍と所見を異にした.本病変にみられるような嚢胞状成分を含む腫瘍を検出した際には,粘液癌を念頭に置いて診断を進める必要があると考える.