Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
胆嚢 

(S609)

術前に胆嚢癌が疑われた,腫瘤状増大が比較的急速であった慢性胆嚢炎の二例

Two cases of chronic cholecystitis with mass-forming growth pattern, preoperatively suspected gallbladder carcinoma

古西 崇寛1, 斎田 司1, 上牧 隆2, 福田 邦明3, 橋本 真治4, 大城 幸雄4, 星合 壮大1, 佐藤 泰樹5, 南 学1

Takahiro KONISHI1, Tsukasa SAIDA1, Takashi KAMIMAKI2, Kuniaki FUKUDA3, Shinji HASHIMOTO4, Yukio OSHIRO4, Sodai HOSHIAI1, Taiki SATOU5, Manabu MINAMI1

1筑波大学附属病院放射線診断・IVR科, 2筑波大学附属病院検査部, 3筑波大学附属病院消化器内科, 4筑波大学附属病院消化器外科, 5筑波大学附属病院病理診断科

1Department of Diagnostic and Interventional Radiology, University of Tsukuba Hospital, 2Department of Clinical Laboratory, University of Tsukuba Hospital, 3Department of Gastroenterology, University of Tsukuba Hospital, 4Department of Surgery, University of Tsukuba Hospital, 5Department of Pathology, University of Tsukuba Hospital

キーワード :

【症例1】
アルコール性肝硬変を背景とした肝細胞癌に対する肝動脈化学塞栓療法(TACE)後の経過観察中の61歳男性.CTで5か月前に微小な壁不整として認められていた病変が10mm大の結節状に増大しており,精査が行われた.超音波検査では胆嚢壁に一致して肝実質と同程度の輝度を呈する11mm大の腫瘤が認められた.粘膜面はやや整に描出されたが,全体としては不整であり壁外へ突出する成分が目立った.内部はわずかに不均一な程度であり,Color Dopplerでの血流シグナルは明らかではなかった.造影超音波検査では,早期濃染と,比較的持続する増強効果が認められた.Dynamic CTでも壁外優位に位置する結節性病変が認められ,動脈優位相での早期濃染および門脈相〜遅延相でのwashoutが認められた.CA19-9,CEAなど腫瘍マーカーの上昇は認めなかった.
【症例2】
腹部大動脈瘤に対する術後4年目,および胸腹部大動脈瘤に対する経皮的ステントグラフト内挿術後3か月目で経過観察されていた75歳男性.経過観察目的のCTで,胆嚢底部に2か月前に認められなかった15×13mmの腫瘤性病変が出現しており,精査が行われた.超音波検査では胆嚢底部の病変はやや粘膜面は整な印象で,内部は中等度の輝度を示し,小さな嚢胞状にみえる無エコー域を複数伴っていた.Color Dopplerでは脈管状の血流シグナルが認められ,栄養血管を伴う胆嚢癌が疑われた.Dynamic CTでは,動脈優位相から染まり始め門脈優位相にかけて漸増性に増強される腫瘤として認められた.造影MRIでは,辺縁部に小嚢胞成分を伴う充実性腫瘤として認められ,やはり漸増性の増強効果を示した.小嚢胞内には小結石を伴っていた.本症例でも腫瘍マーカーの上昇は認められなかった.
いずれの症例も急速な増大から胆嚢癌が疑われ,外科的な摘出術を施行された.病理診断はいずれも慢性胆嚢炎(1例目はchronic cholecystitis with fibrosis,2例目はchronic cholecystitis with abscess formation and granulation tissue)であった.胆嚢の壁肥厚所見において癌を示唆する超音波所見の報告は散見されるが,本症例の画像を振り返ってみても良性病変を上位に挙げるのは難しいと思われた.比較的速い増大を示す経過など興味深い2症例であり,これらにつき文献的考察を加えて報告する.