Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
胆管 

(S608)

胆管内乳頭状腫瘍(IPNB)の診断における造影超音波検査の有用性

That validity of contrast enhance ultrasonography in the diagnosis of intraductal papillary neoplasm of bile duct(IPNB)

中野 聖士1, 黒松 亮子1, 川野 祐幸2, 酒井 味和1, 住江 修治1, 佐谷 学1, 岡村 修祐1, 中島 収2, 鳥村 拓司1

Masahito NAKANO1, Ryoko KUROMATSU1, Hiroyuki KAWANO2, Miwa SAKAI1, Shuji SUMIE1, Manabu SATANI1, Shusuke OKAMURA1, Osamu NAKASHIMA2, Takuji TORIMURA1

1久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門, 2久留米大学病院臨床検査部

1Division of Gastroenterology, Department of Medicine, Kurume University School of Medicine, 2Department of Clinical Laboratory Medicine, Kurume University Hospital

キーワード :

胆管内乳頭状腫瘍Intraductal Papillary Neoplasm of Bile duct(IPNB)は,肝内外の胆管内に有茎性の乳頭状発育を呈し,胆管内に充填する事で紡錘状〜嚢状の胆管拡張・多胞性嚢胞性変化を呈する腫瘍の総称である.臨床的に明らかな粘液を産生し,胆管炎・閉塞性黄疸などを発症し,粘液産生胆管腫瘍とも呼ばれる.2010年WHOの消化器腫瘍分類の改訂で,胆管癌の前癌・早期癌病変として認知された.IPNBは浸潤癌の前病変として認識されているが,その病因や経過はまだ不明瞭な点が多い.今回,肝切除術を施行し病理組織でIPNBと診断し得た2例を経験したので,主に造影超音波検査所見を踏まえて報告する.
【症例1】
77歳・男性.スクリーニング目的の腹部超音波検査で肝S5に占拠性病変を指摘され,精査目的に当院へ紹介となった.B型・C型肝炎ウイルスは陰性で,肝胆道系酵素・AFP・PIVKA-Ⅱ・CEA・CA19-9はいずれも基準範囲内であった.腹部B-mode超音波検査では,肝腫瘍は約35mmの境界明瞭な結節で,内部には低・高エコー域が混在し辺縁は平滑な等〜高輝度に描出され,末梢の胆管は軽度拡張していた.また,腹部造影超音波検査では不均一に造影され,Kupffer相では淡く均一な欠損像を呈した.他の画像診断と腫瘍生検から,肝胆道系悪性腫瘍が疑われたため,切除の方針となった.摘出臓器の肉眼所見では,拡張した胆管内を充満する腫瘤性病変を認めた.病理組織診断の結果,IPNBと診断された.
【症例2】
78歳・男性.上腹部の違和感を感じたため近医を受診したところ,腹部超音波検査で肝S4に占拠性病変を指摘され,精査目的に当院へ紹介となった.症例1と同様,B型・C型肝炎ウイルスは陰性で,肝胆道系酵素・AFP・PIVKA-Ⅱ・CEA・CA19-9はいずれも基準範囲内であった.腹部B-mode超音波検査では,肝腫瘍は約72mmの境界明瞭な結節で,内部には低・高エコー域が混在し辺縁に低エコー帯を伴っており,末梢の胆管は軽度拡張していた.また,腹部造影超音波検査では,腫瘍の辺縁に比較的明瞭な造影効果を認めたが,腫瘍の内部は淡く細い血流を認めるのみであり,Kupffer相では淡い欠損像を呈した.腫瘍生検の結果,炎症性肝細胞腺腫と診断されたが,腫瘍径が大きく肝内胆管の拡張もみられ,悪性腫瘍の可能性が否定出来なかったため,切除の方針となった.病理組織診断の結果,IPNBと診断された.
IPNBは超音波検査・CT・MRIにおいて肝内胆管のびまん性拡張を認め,拡張した胆管内に乳頭状腫瘍を認める症例と,単房性または多房性嚢胞を認め嚢胞内に乳頭状腫瘍を認める症例がある.診断として,内視鏡的胆管造影・経皮経肝胆道造影により病変の描出が可能だが,粘液により明瞭に描出できない場合もあり,何より侵襲的である.その点,超音波検査では非侵襲的にある程度IPNBの特徴を掴む事が可能である.即ち,①B-modeでは境界明瞭な結節で,末梢の胆管が拡張している事,②造影によって腫瘍の辺縁に造影効果を認める事,③Kupffer相では淡い欠損像を呈する事,である.
IPNBは根治切除により良好な予後が期待出来るが,疾患概念・診断基準・治療法・予後など今後さらに検討していく必要がある.その中でも造影超音波検査は,腫瘍の形態と性状を良好に示現しており,今後同様の症例での有用性が期待される.