玉野 正也, 須田 季晋, 中元 明裕, 植竹 知津, 國吉 徹, 小堀 郁博, 大浦 亮祐, 徳富 治彦, 林 和憲, 市川 光沙

Masaya TAMANO, Toshikuni SUDA, Akihiro NAKAMOTO, Chizu UETAKE, Toru KUNIYOSHI, Ikuhiro KOBORI, Ryosuke OURA, Naohiko TOKUTOMI, Kazunori HAYASHI, Arisu ICHIKAWA

獨協医科大学越谷病院消化器内科

Gastroenterology, Dokkyo Medical University Koshigaya Hospital

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症例は71歳，男性．既往歴，家族歴，嗜好歴に特記すべきことなし．常用薬剤なし．2012年2月に皮膚の黄染に気付き他院を受診．肝胆道系酵素およびビリルビンの上昇とIgG4の高値からIgG4関連硬化性胆管炎が疑われたが，無治療でデータの改善を認めた．同年3月に当科を受診し経過観察したところ，9月から肝胆道系酵素の再上昇を認めたため入院となった．167cm，67kg，入院時の身体所見に特記すべきことなし．AST 59 U/L, ALT 89 U/L, ALP 530 U/L, GGT 237 U/L, T-Bil 0.68 mg/dl, Amylase 88 U/L, Lipase 25 U/L, IgG 2460 mg/dl, IgG4 1300 mg/dl, HBs抗原陰性，HBc抗体陰性，HCV抗体陰性，抗核抗体陰性，抗ミトコンドリアM2抗体陰性．
腹部超音波検査では肝門部胆管壁の肥厚と狭小化を認め，末梢の肝外胆管に拡張を認めた．左右の肝内胆管には壁肥厚，直線化，若干の拡張など多彩な所見を認めた．MRCPでは肝内および肝外胆管に限局性の狭窄と硬化像を認め，肝生検にて胆管壁にリンパ球浸潤とIgG4陽性細胞を認めたため，IgG4関連硬化性胆管炎と診断した．臨床症状と血液生化学検査，画像検査等から自己免疫性膵炎の合併はないと判断した．プレドニゾロン20mg/日にて治療を開始し，速やかに肝胆道系酵素およびIgG4の改善を認めた．治療開始から1年後に施行した超音波検査では肝門部胆管壁の肥厚および肝外胆管の拡張は改善し，肝内胆管の所見も改善していた．同時期に施行したMRCPにおいても胆管所見の改善を認めた．
IgG4関連硬化性胆管炎はステロイドに良好に反応し，予後良好の疾患とされるが治療経過を超音波検査で追跡した報告は少ない．興味ある症例と思われ，若干の文献的考察を加えて報告する．