Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
びまん性肝疾患(その他②) 

(S604)

猿島肝炎の疫学調査

Epidemiological research of SASHIMA Hepatitis

樫村 淳子1, 美馬 聰昭2, 樋口 竹広1, 館 釈哉1, 高柳 俊明2, 川西 輝明2

Jyunko KASIMURA1, Satoaki MIMA2, Takehiro HIGUCHI1, Sakuya TACHI1, Toshiaki TAKAYANAGI2, Teruaki KAWANISHI2

1札幌緑愛病院臨床検査チーム, 2札幌緑愛病院内科

1Sapporo Ryokuai Hospital Clinical Laboratory Team, 2Sapporo Ryokuai Hospital of Internal Medicine

キーワード :

【目的】
茨城県坂東市(旧猿島町周辺)では約50年前に水が原因とされる流行性肝炎が大流行し,肝炎患者776名,死亡者61名に達したと言う統計が残されている.当時「猿島の奇病」とも言われた流行性肝炎の現状について疫学調査を行った.
【方法】
対象は当時猿島の奇病発生時に10才以上であった60才以上の方を「猿島肝炎を考える会」で募集した.調査は2014年6月29日から7月8日までの10日間茨城県坂東市(旧猿島周辺)の行政区集会場を巡回し実施した.内容は調査票の記載,肝機能検査,B・C型肝炎ウイルス,AFPなどの検査と日立・アロカメディカル社製のNoblusを使用し腹部超音波診断を行った.
【成績】
受診者は200名で年齢構成は60才から90才で平均70.0才.HBc抗体陽性率34名/200名17%で,北海道最大のC型肝炎ウイルス汚染地域の254名/457名,55.6%と比較し有意に低値を示した(p<0.01).HCV抗体陽性は45名/200名で22.5%.HCV抗体のみ陽性は2名,SVR7名でした.HCV・RNA陽性は36例であるが,ゲノタイプ1Bは18名/36名50%で,これも北海道のC型肝炎汚染地域のゲノタイプ1B96名/103名,90%と明らかに有意差を認めた(p<0.01).超音波検査では,慢性肝炎32名,肝硬変13名,肝がん3名,C型肝がん再発5名(B型1例)と肝がんの発見率が高かった事は,非常に興味深い事実である.そこでC型肝炎の原因を明らかにするため,調査票による分析を行った.町が依頼した研究機関の採血,16名/32名,50.0%,T医院の受診者,19名/76名,25.0%,O医院の受診者,1名/9名,11.1%,T医院+O医院の受診者,11名/41名,26.8%,その他の医療機関受診者,2名/42名,4.8%と町が依頼した機関の採血が猿島の奇病に何らかの影響を与えたと推察さる結果であった(p<0.01).超音波検査を併用することで,無症状の胆石症18名(総胆管結石1名),腎細胞がん,前立腺がんも発見された.
【結論】
水系感染と言われて50年,町は全国に先駆けて上水道の完備を行い,環境衛生に務めた.しかし猿島の奇病と言われ住民を不安に陥れたこの地域は今C型肝炎による肝がんの多発地域であることが分かった.