Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
びまん性肝疾患(その他②) 

(S604)

門脈血栓例の検討

Re-evaluation of cases with portal thrombus

渡辺 智美1, 石田 秀明2, 渡部 多佳子2, 小松田 智也2, 八木澤 仁2, 宮内 孝治5, 長沼 裕子3, 大山 葉子4

Satomi WATANABE1, Hideaki ISHIDA2, Takako WATANABE2, Tomoya KOMATSUDA2, Hitoshi YAGISAWA2, Kouji MIYAUCHI5, Hiroko NAGANUMA3, Youko OHYAMA4

1地方独立行政法人市立秋田総合病院臨床検査科, 2秋田赤十字病院超音波センター, 3横手市立病院内科, 4秋田厚生医療センター臨床検査科, 5秋田赤十字病院放射線科

1Department of Clinical Laboratory, Akita City Hospital, 2Department of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 3Department of Inter Internal Medicine, Yokote City Hospital, 4Department of Clinical Laboratory, Akita Kohsei Medical Center, 5Department of Radiology, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【はじめに】
門脈血栓が種々の原因で生じることは広く知られているが,多数例の検討は比較的少ない.今回我々は下記の要領で門脈血栓例の検討をおこない若干の知見を得たので報告する.
【使用診断装置】
東芝社製:AplioXG,Aplio500,GE社:LogiqE9,日立アロカ社製:Ascendus,Preilus.超音波造影剤はソナゾイド®(第一三共社)を用い,通常の肝腫瘍の造影方法に準じた.
【対象と方法】
過去1年間に経験した門脈血栓症14例(年齢:67-89歳:平均73歳)に関し,a)原疾患,b)門脈血栓の占拠部位,c)Bモード,カラードプラ,造影超音波所見,を検討した.検討c)は,従来,門脈血栓と鑑別が必要となる門脈腫瘍栓との鑑別を念頭に,Bモード上血栓は占拠部位の門脈径の変化が無く腫瘍栓は径が増大しcobra head状になるとされており,さらに,血栓はカラードプラや造影超音波上内部に血流信号が検出されない,とされている.この考えを再検討する意味でおこなった.なお,この14例の血栓の診断は,経過観察で所見が増悪しないこと,臨床的に悪性所見を示唆するものが無いこと,を根拠の基盤とした.
【結果】
a)原疾患は,急性胆嚢炎1例,肝内胆管結石に合併した胆管炎4例,アルコール性肝炎1例,アルコール性肝硬変6例,C型肝硬変1例,術後胆道感染1例,であった.b)占拠部位は,肝内全体1例,門脈右枝5例,門脈左枝6例,肝外門脈2例,で,急性胆嚢炎や胆管炎では全例門脈右枝に,アルコール性肝硬変では6例中5例が門脈左枝に限定していた.c)Bモード上全例で占拠部位の門脈径の変化が無かった.しかし,カラードプラで1例に内部に血流信号が検出された.これはFFT波形で定常流で,造影超音波では門脈優位相で血栓の中心が線状に染まり始め次いで分枝状に広がっていくもので,その時相と分岐パターンから器質化し再開通しれた血栓と考えられた.
【まとめと考察】
門脈血栓形成機序として,近傍の炎症や血行障害などの原因で線溶系の亢進が挙げられてきた.今回の検討では,門脈血栓の原疾患は主に,胆道感染とアルコール性肝硬変であった.前者は門脈近傍の炎症であり,今後胆道感染例では門脈,特に門脈右枝を丁寧にみることで超音波診断の精度が向上すると思われる.一方,肝硬変例でもアルコールによるものが圧倒的に多数を占めたことは注目に値する結果であった.全国的にも肝硬変の主因は肝炎ウイルスであり,全体の6-7割を占めるとされている.これは当院でもほぼ同等であるが,このウイルス性肝硬変ではなく主にアルコール性肝硬変に血栓が出現し,部位も門脈左枝に限定していたのも注目に値する結果であった.アルコール性肝硬変とウイルス性肝硬変では,組織所見や血行動態も異なる,とされており,この様な差異が結果に反映したものと思われるが詳細な出現機序に関しては今後の検討が必要である.