Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
門脈圧亢進症 

(S603)

比較的まれな走行を示した側副血行路の2例

Unusual portosystemic collaterals:report of two cases

片野 優子1, 石田 秀明1, 渡部 多佳子1, 小松田 智也1, 八木澤 仁1, 宮内 孝治2, 長沼 裕子3, 大山 葉子4

Yuko KATANO1, Hideaki ISHIDA1, Takako WATANABE1, Tomoya KOMATUDA1, Hitoshi YAGISAWA1, Takaharu MIYAUCHI2, Hiroko NAGANUMA3, Yoko OHYAMA4

1秋田赤十字病院超音波センター, 2秋田赤十字病院放射線科, 3市立横手病院消化器科, 4秋田厚生医療センター臨床検査科

1Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 2Department of Radiology, Akita Red Cross Hospital, 3Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 4Department of Medical Laboratory, Akita Kousei Medecal Center

キーワード :

【はじめに】
肝硬変例に発達する側副血行路の多くは一定のパターンがあり,その走行全体の予測が可能である.しかし,まれに,そのパターンから逸脱し全体像の把握に苦慮する場合もある.そのような2例を超音波像を中心に供覧する.診断装置:東芝社製AplioXG.超音波造影剤:sonazoid®(第一三共社)で,造影手順は通常の肝腫瘍のそれに準じた.
【症例1】
60歳代女性.反復する肝性脳症を伴う自己免疫性肝炎症例.生化学データ上は肝機能異常は軽度であるが,血中アンモニア値は150〜300μg/dl前後と高値で,肝性脳症による短期入院を繰り返している.超音波Bモード上,肝は両葉とも若干萎縮し,肝内門脈全体は狭小化し(肝門部で径7mm程度),逆流がみられた.門脈血栓や肝腫瘍はみられない.カラードプラ所見は次のとおりである.拡張した傍臍静脈や脾腎短絡はみられず上腸間膜静脈や脾静脈は求肝性であるが,上腸間膜静脈-脾静脈合流部近傍から太い脈管が一本伸展,それはまず左下方へ,次いで右背側へ向かい下大静脈と合流している.血流方向は常に起始部から下大静脈へ向かう定常流である.
【症例2】
80歳代女性.反復する消化管出血を伴う肝硬変例.肝硬変の原因は生化学データと頭部MRI画像所見から,Wilson病によるものと考えられる.超音波Bモード上,肝は両葉とも著明に萎縮しているが肝内門脈血流は順流である.門脈血栓や肝腫瘍もみられない.カラードプラ所見は次のとおりである.拡張した傍臍静脈や脾腎短絡はみられず上腸間膜静脈や脾静脈は求肝性であるが,上腸間膜静脈から右腎周囲に太い血行路が伸展蛇行し下大静脈に合流している.血流方向は常に血行路起始部から下大静脈へ向かう定常流である.
【まとめと考察】
超音波検査で消化管ガスを避けながら細く蛇行している側副血行路を追跡するとき,特にその走行パターンがまれな場合は検査自体に長時間を要することになる.検査時間短縮のためには,側副血行の起始部と合流部をあらかじめ想定し,その2点から迫るのが合理的である.今回の2例にみられたように,通常の走行パターンでは追跡できない場合,上腸間膜静脈-脾静脈合流部近傍と下大静脈を観察することが全体の把握には有用と思われる.なお,このようなまれな走行を示した例が非ウイルス型肝硬変であったことは臨床的には注目に値する.