脇 英彦¹, 伊東 宏祐², 生田 真一³, 相原 司³, 岸 清彦⁴, 山中 若樹³

Hidehiko WAKI¹, Kousuke ITO², Shinichi IKUTA³, Tsukasa AIHARA³, Kiyohiko KISHI⁴, Naoki YAMANAKA³

¹明和病院超音波センター・臨床検査科, ²明和病院臨床検査科, ³明和病院外科, ⁴明和病院内科

¹Department of Clinical Laboratory, Meiwa Hospital, ²Department of Clinical Laboratory, Meiwa Hospital, ³Department of Surgery, Meiwa Hospital, ⁴Department of Internal Medicine, Meiwa Hospital

キーワード :

術中測定した門脈圧は肝切除後肝不全の発生の予知に有用であり，術中門脈圧と超音波造影剤を用いた肝静脈到達時間の関係につきこれまで報告してきた．
【目的】
Sonazoid^®投与後の肝静脈到達時間とReal time Tissue Elastographyの指標を用いて，門脈圧予測の推定式を算定し，前向きに予測した値と術中門脈圧の実測値を比較検討した．
【対象・方法】
対象は2010年1月から2014年3月までの期間に造影超音波検査で到達時間を計測し，術中門脈圧の測定ができた肝切除20例である．その内訳はC型慢性疾患合併肝がん12例，アルコール性肝炎合併肝がん3例，転移性肝がん5例で，全例Child-Pugh分類は肝障害度Aであった．計測項目は，背景因子（年齢，血小板数，ICG15分値，血清アルブミン値，総ビリルビン値，プロトロンビン活性），肝線維化の指標であるReal time Tissue Elastography（RTE）より求めたLiver Fibrosis Index（LFI），肝循環の指標としてSonazoid^®投与後の肝静脈到達時間（HVAT）を測定し，術中門脈圧との相関関係（ピアソン）を解析した．また，重回帰分析により門脈圧予測式を求めた．検討2．2014年4月から12月の期間に予測式から10例において門脈圧を前向きに予測し，術中測定した実測値と比較検討した．平均年齢は66.4歳，背景肝の病理組織は正常肝1例，慢性肝炎4例，肝硬変5例，Child Pugh分類は全例Aであった．
【結果】
検討1．門脈圧は平均18.8（11.0-29.0）cmH2Oであった．門脈圧と有意の相関を認めた因子は血小板数（r=-0.509，p=0.0297），肝動脈到達時間（r=-0.681，p=0.0013），門脈到達時間（r=-0.685，p=0.0012），肝静脈到達時間（HVAT）（r=-0.778，p<0.0001）, LFI（r=0.807，p<0.0001）であった．重回帰分析の結果，HVATとLFIが独立因子として選択され，門脈圧（cmH2O）=24.82-0.45×HVAT（秒）+2.72×LFIの重回帰予測式（自由度調整R2乗値0.89，p<0.0001）が導き出された．検討2．10例の実測門脈圧の平均は19.3（12.0-23.0）cmH2Oで実測値と予測門脈圧値の相関は，（r=0.79，p<0.0006）と有意であった．
【結論】
造影超音波による肝静脈到達時間とReal time Tissue ElastographyによるLFIは，低侵襲的に術前の門脈圧値予測に有用と考えられた．