森 秀明¹, 西川 かおり¹, 塚田 幾太郎¹, 關 里和¹, 小榑 二世¹, 本田 普久¹, 峯 佳毅¹, 髙橋 信一¹, 岸野 智則², 贄田 真由美³

Hideaki MORI¹, Kaori NISHIKAWA¹, Ikutarou TSUKADA¹, Satowa SEKI¹, Kazutoki KOGURE¹, Yukihisa HONDA¹, Yoshitake MINE¹, Shin-ichi TAKAHASHI¹, Tomonori KISHINO², Mayumi NIEDA³

¹杏林大学医学部第三内科, ²杏林大学医保健学部臨床工学科, ³東芝メディカルシステムズ株式会社西東京支店

¹The Third Department of Internal Medicine, Kyorin University School of Medicine, ²Department of Clinical Engineering,, Kyorin University Faculty of Health Sciences, ³Nishitokyo, Toshiba Medical Systems Co.,Ltd.

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【目的】
主に腹部領域で用いられるドプラ法には，パルスドプラ法およびカラーまたはパワードプラ法，ワイドバンドドプラ法（ADF：Advanced Dynamic Flow）があり，造影剤を用いなくても非侵襲的に血流の評価が可能なため，日常臨床の場においても広く用いられている．ドプラ法の利点としてはリアルタイムに血流を可視化できること，さらに血流の方向を確認できること，パルスドプラ法では動脈と静脈の鑑別が容易にできることなどがあげられる．一方，問題点としてはドプラ検査を行うための設定条件が適切でないと，検査を行うことでかえって誤った判定をしてしまうこと，微細で低流速な腫瘍血流や病変が深部に存在する例では感度に限界があり，本来は豊富な血流があるにもかかわらず血流シグナルを検出できない場合などが指摘されてきた．このため腫瘤などの低流速な血流を検出するためには流速レンジを低く設定する必要があるが，その結果モーションアーチファクトの影響を受けやすくなるため，かえって血流が認識しにくくなるといった問題点が指摘されてきた．
今回，東芝メディカルシステムズ株式会社で開発されたモーションアーチファクトを低減させながら，かつ高フレームレートで低流速の血流の視認性を向上させることができるSMI（Superb Micro-vascular Imaging）を用いてその有用性につき検討した．
【使用装置と方法】
使用装置と探触子は東芝メディカルシステムズ社製Aplio500で，探触子はPVT-375BTコンベックス型プローブを用いて，カラードプラ，ワイドバンドドプラおよびSMIを用いて腹部領域の血流を観察した．SMIには従来のカラードプラ法と同様にカラー表示されるcSMI（color coded SMI）とモノクロ表示のmSMI（monochrome SMI）の2つのモードがあり，両モードで観察した．対象は腹部領域の腫瘤や脈管などである．
【結果】
1）SMIではカラードプラやワイドバンドドプラと比べてモーションアーチファクトが低減され，アーチファクトの少ない血流画像が得られた．
2）SMIでは他のドプラ法と比べて高フレームレートで，リアルタイム性に優れた画像が得られた．
3）SMIでは超音波ビームに対して垂直方向の血流も明瞭に描出された．
4）SMIではカラードプラやワイドバンドドプラと比べて肝内門脈肝静脈シャントなどの血管の連続性もより明瞭であった．
5）腫瘤内部の血流表示はcSMIと比べてmSMIの方がより微細な血流の描出が可能であった．肝血管腫では超音波造影剤を用いなくても腫瘤の辺縁部の血流が明瞭に描出された．
6）ソナゾイド^®を用いた造影超音波検査の際に低MI値のSMIで観察すると，より詳細な血流情報が長時間にわたって得られた．
7）一方，SMIは低流速血流を明瞭に描出する目的で開発されたため，高流速血流に関しては他のドプラ法を用いた方が観察しやすいことがあった．
【考察・結論】
SMIを用いると低流速血流を示す腹部腫瘤などのより詳細な血流観察が可能であった．また造影SMIにおいては超音波造影剤投与後，時間が経過しても特徴的な血流情報が得られた．