Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
肝組織性状診断 

(S596)

分子標的治療薬ソラフェニブの肝線維化改善作用の可能性

Sorafenib might improve liver fibrosis in patients with cirrhosis and advanced hepatocellular carcinoma

松井 太吾1, 永井 英成1, 向津 隆規1, 和久井 紀貴1, 篠原 美絵1, 籾山 浩一1, 住野 泰清1, 工藤 岳秀2, 丸山 憲一2, 桧貝 孝慈3

Daigo MATSUI1, Hidenari NAGAI1, Takanori MUKOZU1, Noritaka WAKUI1, Mie SHINOHARA1, Koichi MOMIYAMA1, Yasukiyo SUMINO1, Takehide KUDO2, Kenichi MARUYAMA2, Koji HIGAI3

1東邦大学医療センター大森病院消化器内科, 2東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能検査部, 3東邦大学薬学部病態生化学

1Division of Gastroenterology and Hepatology, Department of Internal Medicine(Omori), School of Medicine, Faculty of Medicine, Toho University, 2Department of Clinical Functional Physiology, Toho University Medical Center Omori, 3Department of Medical Biochemistry, Faculty of Pharmaceutical Sciences, Toho University

キーワード :

【背景】
ソラフェニブ(SF)が肝線維化そして門脈圧亢進を改善させる可能性は,既に動物実験で報告されている.しかしながら,SF投与の線維化と肝実質血流に与える影響についてはまだ検討の余地が残されている.
【目的】
aHCC合併LC症例におけるSF投与の肝機能,肝線維化そして肝実質血流へ与える影響を明らかにする.
【対象】
2009年6月から2014年11月までに,当院へ入院したaHCC合併LC患者でSF投与を行った86症例を対象とした.
【方法】
SF投与前と4週間後の早朝空腹時に採血を行い,血清中のヒアルロン酸とIV型コラーゲンを測定した.またVTTQを用いて肝硬度を測定し,造影超音波を用いて肝臓-腎臓の到達時間差の解析およびその情報の2次元マッピング(At-PI; Arrival time Parametric Imaging)によって肝血流の動脈化率を測定した.
【結果】
症例の内訳では,背景肝はHBV18例,HCV44例,nonBnonC24例で,肝障害度はChild Aが65例,Child Bが21例,癌の進行度はIIIが2例,IVAが68例,IVBが16例であった.SF投与の4週後の時点での治療効果は,PR4例,SD50例,PD32例であった.肝機能の検討では,T-Bil値および%PT値はSF投与前後で有意な変動を認めなかったが,Alb値は投与前後で有意な低下,そしてChild-Pugh scoreは有意な上昇を認めた.血清線維化マーカーの検討では,血清ヒアルロン酸値は投与前後で有意な変動を認めなかったが,血清IV型コラーゲンおよびP-III-Pは有意な低下を認めた.VTTQは投与前後で有意な低下を認めた.また,検討可能であった症例の動脈化率は投与前後で有意に低下した(遠肝性門脈血流は除く).なお,腫瘍増大に伴う線維化および肝硬度の影響を排除するため,PD症例を除いた症例での検討も行ったが,同様の結果を認めた.
【結語】
aHCC合併LC症例におけるSF投与は,血中Alb値を低下,Child-Pugh scoreを上昇させ肝障害度を悪化させるが,肝実質の門脈血流を改善すると共に線維化を改善する可能性が示唆された.