Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
びまん性肝疾患(エラストグラフィ②) 

(S592)

Acoustic Radiation Force Impulse(ARFI)を用いた肝線維化診断に影響する因子

Factors influencing on liver stiffness measurements using acoustic radiation force impulse elastography

瀧口 良重1, 新垣 直樹2, 森 良幸2, 井上 泉2, 松下 裕1, 井上 良子1, 中塚 賢一1, 森井 眞治1, 大石 博晃1, 玉井 秀幸2

Yoshie TAKIGUCHI1, Naoki SHINGAKI2, Yoshiyuki MORI2, Izumi INOUE2, Yu MATSUSHITA1, Ryoko INOUE1, Kenichi NAKATSUKA1, Shinji MORII1, Hiroaki OOISHI1, Hideyuki TAMAI2

1和歌山県立医科大学附属病院中央検査部, 2和歌山県立医科大学第二内科

1Central Laboratory, Wakayama Medical University Hospital, 2The Second Department of Internal Medicine, Wakayama Medical University

キーワード :

【目的】
Acoustic Radiation Force Impulse(ARFI)を用いた肝線維化診断は,せん断弾性波速度(shear wave velocity:Vs)の測定により,非侵襲的評価が可能である.Virtual Touch Tissue Quantification(VTTQ)では,計測値の信頼性が乏しい場合,X.XX m/sとして表示され,測定不能となるが,測定可能にもかかわらず,実際の組織学的線維化診断と大きくかけ離れる場合がある.本研究の目的は,VTTQの測定に影響する因子を明らかにすることである.
【方法】
2010年12月から2013年12月までにVTTQを行い,肝生検(797例)または肝切除(141例)により組織学的に線維化を評価し得た938例を対象とし,測定結果に影響する因子についてレトロスペクティブに解析した.使用機種は持田シーメンス社ACUSON S2000.右肋間走査で肝右葉前区域で,息止め下にVs値を10回測定し,その平均値を算出した.
【結果】
対象の組織学的線維化診断はF0:49例,F1:101例,F2:211例,F3:255例,F4:322例.平均Vs値はF0:1.26±0.44m/s,F1:1.30±0.52m/s,F2:1.48±0.66m/s,F3:1.86±0.71m/s,F4:2.40±0.80m/sであった.スミルノフ・グラブス検定で外れ値であったのは15例(F0:3例,F1:5例,F2:7例,F3:0例,F4:0例)であり,外れ値症例はすべてF2以下でみられた.外れ値症例の平均Vs値はF0:2.76±0.20m/s,F1:3.05±0.78m/s,F2:3.66±0.21m/sといずれも実際の線維化よりも高値を示した.その内,臨床診断では肝硬変だが組織診断はF2であり,組織学的に過小評価されたと考えられる症例が2例,また急性肝炎例が1例みられた.この3例を除く12例を外れ値群と定義し,非外れ値群と年齢,性,肝腎コントラスト,肝炎の原因,Body Mass Index(BMI),Alanine aminotransferase(ALT)値,プローブから肝表面までの距離,Region of interest(ROI)の深度,肝表からROIまでの距離を比較した.単変量解析にて肝炎の原因,BMI,プローブから肝表までの距離,肝表からROIまでの距離に有意差がみられ,外れ値群のほうがC型肝炎以外で頻度が高く(3.6%vs 0.4%,P<0.01),BMIが高く(29.58±5.18 vs 23.33±3.55,P<0.01),プローブから肝表までの距離が長く(22.73±5.81mm vs 17.05±3.31mm, P<0.01),肝表からROIまでの距離(13.60±4.13mm vs 19.32±7.11mm, P<0.01)が近かった.多変量解析では,肝炎の原因,BMI,肝表からROIまでの距離が独立因子であった.
【考察】
ARFIを用いた肝線維化診断において,急性肝障害や閉塞性黄疸等でVs値が高値となることは知られている.また肝生検組織では肝切除標本に比べ,線維化が過小評価される傾向がある.しかし,本研究では,それ以外の因子として,肝炎の原因,BMI,ROI設定部位がVs測定値に影響を与える独立因子であることを明らかにした.ROIの設定部位は多重反射の影響を受けやすい肝表に近いところ避けることが重要である.またC型肝炎でない症例,肥満のある症例では線維化を過大に評価される危険があり,他の線維化診断法と合わせて慎重に判断する必要がある.