矢島 義昭

Yoshiaki YAJIMA

黒沢病院附属ヘルスパーククリニック内科

Internal Medicine, Health Park Clinic Kurosawa

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演者らは既にdifferential THIを搭載した超音波装置を用いた新しい脂肪肝の診断基準について報告した1）．今回はこの診断基準に従った高度のNAFLDにおける脾腫の実態について報告し，NASHの推定の可能性について検討した．
【対象および方法】
対象は当院の人間ドック受診者より無作為に抽出した正常者370名，中等度NAFLD 267名，高度NAFLD 279名である．今回の正常群の男女比は（1：1.46）で平均年令は男性49才，女性48才であった．飲酒に関しては1合以下の晩酌は可とした．超音波装置は東芝のEXALIO-XGである．高度脂肪化の定義は中等度以上の肝腎コントラストに肝血管不鮮明化，深部減衰のどちらか，あるいは両者が同時にみられた場合とした．脾腫の評価は左肋間走査での脾の最大断面において最大長軸径を測定しL maxとした．脂肪化の判定，脾腫の計測は，検査技師が記録していた静止画像より超音波専門医がおこなった．
【結果】
1）Lmaxの正常上限値の推定
正常群の分布はほぼ正規型を示した．Lmaxの平均値±2SDは80±21mmで，95％信頼区間は59〜101mmとなり一般に用いられている基準値Lmax≦10cmに一致した．しかしながら脾腫を問題としているので，“異常に小さい”は無視してよいので片側に5％設定すると累積度数曲線より95％信頼区間はLmax≦95mmとなった．
2）高度NAFLD群におけるL maxのヒストグラムとNASHの推定
高度のNAFLD群の分布もほぼ正規型であった．Lmaxのmean±2SDは91±27mmであった．Lmax＞95mm（脾腫）の階級には高度NAFLD群の40％が該当した．大きい方の片側に5％の棄却域を設定すると高度NAFLD群の95％信頼区間はLmax≦115mmとなった．従ってLmax＞115mmでは脂肪沈着によるsinusoidal block以外の脾腫の原因の関与が疑われ，炎症や線維化が問題となるNASHを推定することができる．
【考察】
左肋間走査での脾の最大長軸（L max）の正常上限値は95mmであった．高度のNAFLDでは40％が脾腫を示した．高度のNAFLD群の95％信頼区間は≦115mmであるので，Lmax＞115mmでNASHを推定することができる．
【文献】
1）矢島義昭，ほか：Differential tissue harmonic imaging超音波診断装置による脂肪肝の所見-CT所見との対比による診断基準の再評価-. Jpn J Med Ultrasonics 2010;37:587-92