Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
脂肪肝 

(S588)

不規則脂肪肝における肝実質エコーテクスチャの解析

Texture analysis for irregular fatty liver

紺野 啓, 高山 法也, 神田 美穂, 山本 さやか, 宮本 恭子, 宮本 倫聡, 鯉渕 晴美, 谷口 信行

Kei KONNO, Noriya TAKAYAMA, Miho KANDA, Sayaka YAMAMOTO, Kyoko MIYAMOTO, Michiaki MIYAMOTO, Harumi KOIBUCHI, Nobuyuki TANIGUCHI

自治医科大学臨床検査医学

Department of Clinical Laboratory Medicine, Jichi Medical University School of Medicine

キーワード :

【目的】
超音波Bモード像において,脂肪肝の肝実質が高輝度であることは超音波診断における常識である.一方,輝度以外のエコーテクスチャの性状については定説がなく,その記述・評価は主として検者の主観に基づいて行われている.こうした現状は改善が望ましく,またこれらにおける一定の特徴が明らかになれば,脂肪肝診断の一助ともなり得るものと考えられる.
今回は脂肪肝のエコーテクスチャの基本的性状を明らかにするため,不規則脂肪肝を対象として解析を試みた.
【対象】
2014年1月〜10月の期間に,腹部超音波検査にて,少なくとも2人の検者により不規則脂肪肝と診断された症例のうち,1)区域性の輝度差が明瞭で区域内が均等,2)両者の境界が明瞭,3)境界が垂直方向に近く,水平方向で領域間のエコーテクスチャの比較が可能,の条件を満たした症例24例.
【方法】
1)上記条件に合致する領域が描出されたBモード画像上に,輝度差の明瞭な2つの領域間の境界を中心に,各領域における長さが等しくなるように最大限の水平線を引き,各領域における水平線上の輝度値を取得した.
2)水平線上の輝度値の変化は,スペックルの性状を反映し周期的・規則的な変化を示すが,これを波とみなし,FFT波形解析ソフトを用いて周波数解析を行った.結果を各領域間および症例間で比較検討した.
3)同時に各領域における水平線上の輝度値からヒストグラムを作成し,統計学的特徴量を用いて各領域間・症例間で比較し,周波数解析結果とも比較した.
4)使用装置:日立アロカ社製SSD5500SV,Prosoundα10,Prosound F75,Ascendus
【結果】
1)いずれの症例,領域においても,肝実質の輝度値は周期的な変化を示し,波状を呈した.
2)これらを波とみなして行った周波数解析では,いずれの症例・領域でも,低い周波数の特定の周波数成分が優勢となる傾向がみられ,また同一症例の高輝度領域と低輝度領域ではほぼ同様の傾向がみられた.
3)最も優勢な周波数成分は,高輝度領域でより高いもの7例,低輝度領域でより高いもの12例,高輝度領域と低輝度領域で差がないもの5例であった.
4)いずれの症例・領域でも特定の周波数成分が優勢な傾向を示したが,1つの周波数成分が特に優勢なものは7例,優勢な周波数成分が複数存在しバラつきが目立つ例が17例で後者が多かった.
5)周波数成分のバラつきを領域別にみると,高輝度領域でのみ目立つもの2例,低輝度領域でのみ目立つもの7例,両者で目立つもの8例で,低輝度領域でのバラつきがより目立った.
6)群間の比較では,高輝度領域において周波数がより高い群では,高輝度領域および低輝度領域の両者でバラつきが目立つものが多く,低輝度領域において周波数がより高い群では,バラつきが目立たないものと低輝度領域でのみバラつきが目立つものが多かった.
7)ヒストグラムによる統計学的特徴量の解析では,高輝度領域の方が低輝度領域より常に平均輝度が高く,両者間に分散の差は認めなかった.
【考察】
今回観察された,肝実質における水平方向の輝度値の規則的な変化は,スペックルの性状を反映しており,その周波数パターンはスペックルの細かさを表すと考えられる.今回対象とした高輝度領域と低輝度領域は脂肪肝実質の脂肪沈着の程度の違いにより生じていると考えられるが,今回の検討で,脂肪肝では実質の脂肪沈着の差により,輝度以外にもエコーテクスチャ(スペックル)の細かさに変化が生じる可能性が示された.またこの変化は,輝度の変化とは必ずしも関連がない可能性があり非常に興味深い.今後も症例を増やし,適切な条件の検討も含めて検討を重ねていきたい.