Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
びまん性肝疾患(エラストグラフィ①) 

(S585)

Shear Waveを用いた肝臓の弾性定量値測定の初期使用経験

Evaluation of liver stiffness by Shear Wave Elastography

西脇 隆1, 松居 剛志2, 竹内 有加里3, 遊佐 亨4, 真口 宏介2

Takashi NISHIWAKI1, Takeshi MATSUI2, Yukari TAKEUCHI3, Toru YUSA4, Hiroyuki MAGUCHI2

1手稲渓仁会病院診療技術部, 2手稲渓仁会病院消化器病センター, 3手稲渓仁会病院臨床検査部, 4手稲渓仁会病院超音波センター

1Department of Radiology, Teine Keijinkai Hospital, 2Center for Gastroenterology, Teine Keijinkai Hospital, 3Department of Medical Laboratory, Teine Keijinkai Hospital, 4Center for Ultrasonography, Teine Keijinkai Hospital

キーワード :

【緒言・目的】
近年,低侵襲的な超音波検査装置を用いた組織および腫瘍の弾性定量化の研究が進んでいる.当院でも,人体に影響のないレベルの高音圧(push pulse)をプローブから肝臓に加える事で生じるShear Waveの速度測定を行い,弾性定量化についての検討を開始したので,その初期段階の使用経験について報告する.
【使用装置・プローブ】
GE社製LOGIQ E9 コンベックスC1-6 XD clear(中心周波数4.0MHz)
【対象】
主疾患として肝障害,びまん性の肝疾患を有する肝疾患患者16例(臨床的肝硬変・慢性肝炎:13,成因不明肝障害:3)と,臨床的に肝疾患を伴わない非肝疾患被検者13例(非肝硬変・非慢性肝炎)の計29名.年齢26歳〜87歳(68.2±14.1歳).男性20名,女性9名.
【方法】
仰臥位にて右肋間走査で肝S5を描出し,肝表の近傍(深さ約3〜7cm)にて血管や腫瘤像等が入らない様に台形ROIを置き,軽い呼気止め状態でShear Waveの速度を測定する.これを被検者1人あたり10回連続して行い,その平均値(mean)をその被検者の弾性定量値Vmとする.また,肝臓の超音波所見で肝硬変または肝線維化の所見とされる①肝縁の鈍化,②肝実質粗雑,③肝表面の凹凸の3項目をそれぞれ1pointと定めscoringし,このscoreとVmとの相関性について検討した.尚,検査士間での測定方法のばらつきをできるだけ軽減するため,腹部超音波検査に熟練し,超音波検査士の資格を有する2人の技師で測定した.
【検討項目】
1.scoreとVmとの相関性.2.同一被検者における10回測定値のばらつきが大きかった例の要因.
【結果】
1.score0は4例(非肝疾患被検者:2,肝疾患患者:2)でVm:1.3525±0.281 m/s,score1は10例(非肝疾患被検者:9,肝疾患患者:1)で1.477±0.307 m/s,score2は6例(非肝疾患被検者:2,肝疾患患者:4)で1.698±0.315 m/s,score3は9例(すべて肝疾患患者)で1.964±0.261 m/sであり,scoreはVmと相関していた(r=0.6430,p=0.0002)2.同一被検者の測定値で標準偏差が0.4以上とばらつきが大きかったのは2例であり,測定部位が比較的深部に存在し,皮下脂肪組織等によるアーチファクトや減衰が生じていた.
【検討・考察】
肝臓の超音波所見scoringとVmは概ね相関が示された.超音波検査報告書に肝臓の超音波所見とVmを併記することで,説得性と客観性がある程度増すことが期待される.ただし,同じscore内でのVmのばらつきも無視できず,必ずしも超音波所見とVmが一致しない場合もある.この要因としては,ROIが比較的深部に存在し,皮下脂肪組織等によるアーチファクトや減衰が生じていたことのほか,肝実質の粗造不均質性,息止め不良やプローブの固定の甘さ,拍動,血管壁の影響等が考えられる.また,肝臓の超音波所見と実際の肝臓の硬さの乖離も考えられ,今後は肝生検等との比較も必要と考える.
【結語】
Shear Waveによる肝臓の弾性定量値の測定は検査や診断の一助となり得る.さらに信頼性を高めるには測定方法や装置の設定等など今後更なる多面的な検討が必要である.