Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
肝腫瘍(症例報告②) 

(S583)

Hepatobiliary cystadenomaの1例

A case of hepatobiliary cystadenoma

草野 昌男, 駒沢 大輔, 伊藤 広通, 土佐 正規, 大楽 尚弘, 池田 智之, 高橋 成一, 池谷 伸一, 中山 晴夫

Masao KUSANO, Daisuke KOMAZAWA, Hiromichi ITOU, Masaki TOSA, Naohiro DAIRAKU, Tomoyuki IKEDA, Seiichi TAKAHASHI, Shinichi IKEYA, Haruo NAKAYAMA

いわき市立総合磐城共立病院消化器内科

Department of Gastroentelorogy, Iwaki Kyoritsu General Hospital

キーワード :

Hepatobiliary cystadenomaは,肝および胆管発生の嚢胞性疾患の4.6%を占めるに比較的少ない疾患である.今回われわれは,繰り返す心窩部痛と貧血がみられた1例を経験したので報告する.
【症例】
83歳,女性
【主訴】
心窩部痛
【既往歴】
1972年胆嚢結石で胆嚢摘出,1990年狭心症,1995年天疱瘡,2000年甲状腺機能低下症,2007年肝左葉外側区に径10cmの肝嚢胞を認め,嚢胞内出血の診断で入院.CA19-9 1635 U/mlと高値.茶褐色の嚢胞液350mlをドレナージ後,エタノール固定を施行した.嚢胞液のCA19-9 496831U/mlと高値,細菌培養は陰性,細胞診はClassIであった.2011年総胆管結石で乳頭切開,採石術を施行.2012年腹部USで総胆管内に体位変換で移動する内容物を認め,総胆管結石再発の疑いで入院.内視鏡的採石術の際に胆道内に凝血塊を認めた.抗血小板薬内服による肝嚢胞エタノール固定部から胆道の出血を疑った.細胞診はClassI.
【現病歴】
2013年5月CA19-9 124.5U/mlと軽度上昇,腹部USでは,肝左葉の肝嚢胞エタノール固定部に低エコー部分を伴う高エコー腫瘤として描出され,腹部CTでやや増大傾向を示したため精査入院した.
【腹部USの経過】
2007年9月,肝左葉に径10cmの内部に高エコーの内容物を伴う嚢胞を認めた.2007年10月,肝左葉肝嚢胞エタノール固定部に一致して径6cmの内容物を伴う嚢胞と隣接して淡い高エコーの内容物を伴う径2cmの嚢胞を認めた.2008年2月,同部は径3cmの高エコーと低エコーの混在する腫瘤,隣接する径1.6cmの嚢胞を認めた.2009年4月,同部は径3cmの高エコー部を含む低エコー腫瘤,隣接する径2cmの嚢胞内には体位変換で移動する等エコーの内容物を認めた.2010年6月,同部に周囲が低エコー,内部が高エコーの径4cmの腫瘤を認めたが,隣接する嚢胞は消失していた.2011年4月,同部の内部エコーは不均一,境界不明瞭であった.2012年6月,同部の腫瘤はやや高エコーで,肝内胆管(B3)の拡張,総胆管内に内容物を認めた.2013年4月,同部には,内部に低エコーを伴う径4.6cmの高エコー腫瘤,と観察するたびUS像が変化していた.
【入院後経過】
肝腫瘤生検を施行した結果,biliary papillomaと診断した.繰り返す心窩部痛,血液検査で貧血を認め,さらにCA19-9 490U/mlと上昇あり悪性腫瘍を否定できないため,2014年1月に肝外側区域切除を施行.腫瘤は径4cm大で境界明瞭,周囲に浸潤はみられなかった.病理組織学的には,大小のcystic lesionを認め,それらの壁はcollagenous stromaによりなり,腫瘍成分は内腔に向かい乳頭,腺管構造を形成し増殖しており,hepatobiliary cystadenomaと診断した.術後は腹痛,貧血なく順調に経過している.
【考察】
Hepatobiliary cystadenomaは,比較的まれな嚢胞性疾患である.通常,本疾患は多房性で多くは充実性成分や壁在結石がみられるが,本例は径10cmの単房性の嚢胞で明らかな壁在結石,壁肥厚はみられなかった.肝嚢胞エタノール固定部に一致して出現し,また繰り返す心窩部痛と血液検査での貧血をきたした1例を経験し,臨床経過,画像とも示唆に富む症例と考え報告する.