杉原 誉明¹, 孝田 雅彦¹, 三好 謙一¹, 的野 智光¹, 石田 秀明²

Takaaki SUGIAHRA¹, Masahiko KODA¹, Kenichi MIYOSHI¹, Tomomitsu MATONO¹, Hideaki ISHIDA²

¹鳥取大学医学部附属病院消化器内科, ²秋田赤十字病院消化器内科

¹Department of Gastroenterology, Tottori University Hospital, ²Department of Gastroenterology, Japanese Red Cross Akita Hospital

キーワード :

【はじめに】
Thread and streaks signは元来血管造影で造影早期に門脈内に多数の小血管を認める所見で，門脈腫瘍栓を意味する．Color Dopplerでは腫瘍栓内部に点状の血流信号を認めるが，明瞭なthread and streaks signは描出できない．今回，Sonazoid^®造影超音波検査にて同所見を描出し得たので報告する．超音波診断装置はAplio500，3.5MHzコンベックスプローベを用いた．超音波造影剤Sonazoid^®は0.01 ml/kgを急速静注した．
【症例報告】
症例1；60歳代男性．2014年4月に腹痛・黄疸の症状で受診された．総ビリルビン7.9mg/dl（直接ビリルビン4.9mg/dl），AST 151IU/L, ALT 255 IU/L, ALP 1430 IU/L，γGTP 1855 IU/L，AFP 18888ng/ml, PIVKAII 71138 mAU/mlと上昇を認めた．肝右葉に10cmのmosaic patternを呈する腫瘤，両葉の肝内胆管の拡張を認めた．門脈本幹には軟部陰影を認め，color Dopplerで点状の血流信号を認めた．造影超音波では，造影剤注入13秒後線状の染影，16秒後全体が濃染し，20秒後に門脈への流出を確認した．Thread and streaks signと判断し，肝細胞癌による門脈腫瘍栓と診断した．症例2；50歳代男性．2014年10月に腹痛で受診された．血液検査ではAFP 62194 ng/ml, PIVKAII 1446 mAU/mlと上昇を認め，肝右葉後区域に10cmの境界不明瞭な腫瘤と，門脈右枝と前区域枝に軟部陰影を認めた．右枝では同部位にcolor Dopplerで点状の血流信号を認めたが，前区域枝には明らかな血流信号を認めなかった．造影超音波では，門脈右枝に造影剤注入10秒後から線状の染影を認め，13秒後に全体が濃染した．30秒後には門脈へ流出した．Thread and streaks signと判断し，肝細胞癌による門脈腫瘍栓と診断した．一方前区域枝には壁在性に血流欠損域を認め血栓と診断した．
【考察】
門脈腫瘍栓診断に関する造影超音波の報告では，その正診率は92-93％と高く，生検やcolor Dopplerよりも有用とされる．今回造影超音波にて門脈内にthread and streaks signを明瞭に描出し得たので報告する．