Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
肝腫瘍(症例報告①) 

(S580)

造影超音波にて特異な画像経過を示した肝炎症性偽腫瘍様病変の1例

Unusual findings of contrast enhanced ultrasonography in inflammatory pseudotumor like lesion of the liver: A case report

今西 梨菜, 鈴木 康秋, 井尻 学見, 芹川 真哉, 杉山 祥晃

Rina IMANISI, Yasuaki SUZUKI, Masami IJIRI, Shinya SERIKAWA, Yoshiaki SUGIYAMA

名寄市立総合病院消化器内科

Gastroenterology, Nayoro City Genaral Hospital

キーワード :

【症例】
80歳代,女性.39℃の発熱,倦怠感があり近医に入院.CTにて肝右葉に巨大な腫瘍性病変を指摘され,当科転院となった.血液生化学検査では,WBC 15,400,CRP 27.3,AST 92,ALT 59,ALP 805,T-Bil 0.6,γGTP 82と,肝胆道系酵素の上昇と著明な炎症反応を認めた.腹部造影CTでは,肝右葉に蜂巣状の巨大腫瘤を認めた.B modeでは,肝実質は粗造で微小嚢胞様病変が多発していたが,腫瘤の境界は不明瞭であった.造影超音波の血管相では腫瘤全体は造影され,その内部に辺縁が淡く造影される蜂巣状の造影不良域を認めた.後血管相では造影欠損は不均一であった.以上より,強い肉芽増生を伴う慢性肝膿瘍または肝炎症性偽腫瘍(IPT)が考えられた.液状化領域は小さくドレナージの適応はないため,抗菌剤(Doripenem)を投与した.9日目の造影超音波では,血管相では造影は不均一になり,依然として内部に蜂巣状の造影不良域を認めた.3週後にはWBC,CRPとも正常化した.同時期の造影超音波では,血管相では蜂巣状の造影不良域は消失し,S5, S7に2個の高血流腫瘤を認め,後血管相では造影欠損になり,HCCのような所見を呈した.しかし,その1ヶ月後の造影超音波では,これらHCC様の腫瘤は消失していた.
【考察】
肝炎症性偽腫瘍(IPT)は,感染や炎症に対し,反応性に形成された腫瘤性病変であり,病因・病態は様々である.炎症の修復機転における慢性炎症細胞浸潤を伴う線維芽ないし筋線維芽細胞の過剰な増殖が腫瘤形成に関連するが,肝膿瘍が器質化され,炎症性肉芽組織に置換されていく過程でIPTが発生することもある.本症例も肉芽組織に置換されていく過程で血管増生を伴い,HCC様の高血流性腫瘤所見を呈したと考えられた.また,発症時は,病変全体は淡く造影され,内部に蜂巣状の微小膿瘍所見が多発しており,肝放線菌症などの肉芽腫性肝膿瘍が疑われた.