Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 消化器
肝腫瘍(診断 その他) 

(S571)

肝腫瘍領域における音響放射力の引き起こす変位とその伝播の観察

Generation and Propagation of Shear Waves Induced by Acoustic Radiation Force in Focal Liver Lesion

金山 侑子1, 渡辺 正毅1, 森安 史典2

Yuko KANAYAMA1, Masaki WATANABE1, Fuminori MORIYASU2

1東芝メディカルシステムズ株式会社超音波開発部, 2東京医科大学消化器内科

1Ultrasound Systems Division, Toshiba Medical Systems Corporation, 2Department of Gastroenterology and Hepatology, Tokyo Medical University Hospital

キーワード :

【はじめに】
音響放射力を利用したせん断波イメージングは,肝線維化や肝炎の診断において使用が普及しつつあるが,肝腫瘍の鑑別診断を目指した試みもある[1].TUS-500Aのshear wave elastography(SWE)においては,信頼性が低いと判断された部分は結果を表示しないと同時に,伝播画像でせん断波が期待通りに伝播しているかを確認することができる[2]が,我々の経験では腫瘍領域付近では硬さ画像上で結果が表示されず,かつ伝播画像も乱れることがある.そこで,本研究では肝腫瘍部分において音響放射力を印加した際にどのような現象が起こっているのかを検討した.
【手法】
試作装置はTUS-500A,探触子はPVT-375BTとし,製品搭載のSWEにおいて画像を取得した.また製品機能とは別に,ROIの端部から9.5度の角度位置においてpush pulseを照射して音響放射力を印加し,その前後にそれぞれ10回,50回の観測用パルスを約5kHzで送受信した.ドプラ法を用いて各点の変位の時間変化を算出し,多項式フィッティングにより動き補正をしてせん断波の発生と伝播を観測した.対象は正常肝および肝細胞癌とした.
【結果】
正常肝および肝細胞癌の硬さ画像と伝播画像を図1に示す.正常肝においては硬さ画像が均一で,伝播画像においてもせん断波がまっすぐに伝播していることが見て取れるが,肝細胞癌症例においては硬さ画像が不均一で抜けが多く,伝播画像においても線が乱れている.両症例において,ROI内部で音響放射力を印加した際の下向きの変位を,lateral方向に複数時相においてプロットしたものを図2に示す.正常肝においては音響放射力印加直後に大きな変位が生じ,その変位が左右に伝わって行く様子が見られるが,肝細胞癌症例においてはそもそも生じている変位が小さく,しかも左右に伝播することなくその場で変位が消滅していっている様子が見られた.
【まとめ】
腫瘍内部においてはせん断波の発生および伝播が起こりにくい症例があることが分かった.正常肝ではせん断波の波長レベル(1〜5mm)において均一な構造を示すが,肝細胞癌ではそれが不均一なことがその原因と考えられる.これら組織学的な背景については,今後,画像と対比した病理学的検討が必要である.
【参考文献】
[1]Gallotti et al., European Journal of Radiology 81;451(2012)
[2]金山他,日超医87回抄録集,S472(2014)